【某/川上 弘美】


ただ存在することと、生きるということについての物語。


アイデンティティーの確立という治療を開始して、様々な人物へ変化する中で、最初は流されるように某としていた主人公が、徐々に自らの意思で行動するようになる。

『何にでもなれ、どこにでも存在できるということは、生きていないのと同じことなのだということに、いつあたしは気がついたのだろう。』


某とした存在から自己愛、自己保存の本能、共感、そして相手のために自分を犠牲にできる他者への愛を学んだ時、本当の生を手に入れた主人公。

ただ存在することを犠牲に、生と死を受け入れたのだと思う。


面白かったです。

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