深紅のトースター


何をやってるんだ

何がしたいんだ

続く晦渋の自問自答が虚空に響く


嘘で塗り固めた経歴は

当人でさえもいつからか

どこからどこまでが嘘なのか

真実と見分けがつかなくなってしまった

身勝手な原罪意識がもたげ

相槌を打つことさえ

打算に過ぎないのではと躊躇わせる


白銀の摩天楼

焦がれた思春期の残像

齧り倒した喪失の初春の名残

狂おしい濃度で畳み掛けるすべては

走馬灯のようにもったいぶった加速度で

あらゆる神経を瓦解させ

深海へと不埒に寄せては返していく


五感が不感症を患って久しい

最後に鏡に向って微笑んだ記憶も危うい


パン滓の残る

トースターからは

焦げついた匂いがうっすらと

火葬のような趣でうっすらと

漂いつつ

鼻元をくすぐっては 薄れていく今朝だった




            ( 第49回 岐阜市文芸祭 現代詩 佳作 )


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【 初出 】


詩のブログ

『 橙に包まれた浅い青 』


2021年05月31日

「 深紅のトースター 」

http://komasen333.blog.jp/archives/9949695.html

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