透明な黄金色の額縁


ニット帽の幼女

白髪交じりの老女

スクロールする駐車場で

台本でもあるかのように立ち止まる


言語なき会話

紡がれる身振り手振りの無重力

窓越しに観察する月曜日のわたし


縁取る午前の陽光

遮り始めた厚い灰色の雲

促されるようにして

幼女の母はマフラー片手にやって来る


水たまりもないアスファルトにも関わらず

陽光はプリズムと見紛うばかりの細やかさで

透明な黄金色の額縁そのものとなり

その三人を静かに縁取っていく


世界は

わたしが想うほど

素晴らしいものではないのだと

世界は

わたしが想うほど

くだらないものでもないのだと


教え諭すかのように

午前の陽光は

ふんだんな慈悲を

未だ見ぬ午後へと受け継いでゆく




              ( 第53回 大垣市文芸祭 詩 佳作 )


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【 初出 】


詩のブログ

『 橙に包まれた浅い青 』


2021年05月20日

「 透明な黄金色の額縁 」

http://komasen333.blog.jp/archives/9816029.html

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