戦わぬ者たち

 「お待ちください。謝罪に来たというわけではないんです。」




そう言いながら、鎧を着た者たちが追い掛けてくる。私は歩きながら、




「その用件とやらはなんだ。」




そう聞いてやると、




「実は、あなた様にぜひとも城へ来てほしいのです。」




と図々しくも命令してくる。私の答えはもう決まっている。




「嫌だ。」




即決で答える。隊の長らしきものは、困惑しながらも必死に懇願する。




「なんですと、こ、これは姫様からのご命令でございます。でなければ私の首が飛んでしまいます。」




なんとも無礼な姫だなと思い、そいつに




「なぜ、わざわざこちらから出向かなければならん。用があるならそちらから来たらよいであろう。」




無慈悲に言い放つ。しかし、その者は納得がいかないようで、




「い、行かぬと仰せなら私たちが力ずくでもお連れします。」




とこちらを睨みつける。ほぉーーーもう一枚、絵でも書こうかという気持ちになる。




「なら、さっそく始めようか。」




私そう言い放ち、「朱筆」を片手に握り、そこに棒立ちする。




隊の長は、こちらを睨んでいる。しかし、動こうとせず汗だけを垂らしている。その状態がしばらく続く。




そうして、その男はそのまま動こうとしなかった。その男からは微塵も戦う気力が感じられなくなった。




「なんじゃ、戦わぬのか。ほかに戦うものはおるか。」




後ろの奴まで聞こえるように物を言うが、誰ひとりからも戦う意志が感じられない。




私は興が冷めてしまい剣をしまう。そして、また歩き出す。




「お前の長に告げよ。用があるなら、自分から来いと。」




隊の長に言うのであった。




 どこか、いい寝床はないかのと、街を闊歩する。通りには、誰ひとりとして歩いていない。いや、近くにはいるのだろうが、私を怖がって誰も出てこない。




もう日も暮れて、辺りからは明かりが灯し始めていた。




修羅の世界でも、見た光景だ。明かりを灯すとそれに釣られた者たちが、近くにやってくる。そこで戦いが始まる。




こんなに血の気のない灯かりに少し驚く。すると、リンとアテナが私を見つけて、駆け寄ってくる。



「もう勝手に行かないでください!! 」



そうアテナが息を切らしながら、私の手を掴んで引っ張る。そうして、私は彼女らに連れていかれて、一件の家に入る。


おお、宿か。気が利くではないか!! 



そして、私は敷かれている布の上で横になり、寝るのであった。

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