君よ

遠い遠い未来のそば

人は生きることができない

大海にぽっかり浮かんだ砂漠のような

現在いまど真ん中・・・・で息をすることしか

人間には許されていない


蚊の顔でやって来る天の遣いを

欲望色の旗を広げて矍鑠かくしゃくと潰す人たちがいる

唾を忘れて渇いた喉に

自ら矢を当てる者もいる

そんな喜劇的な悲劇に捉えられながら

人は今日の心臓を生きている


喘ぎながら霧の街を建てる人もいる

躊躇ためらいが夢の皿を割ることもある

しかしそれでもなお

束になった昨日たちは

私の背中を張りつめた騒音と共に押し流す

明日という希望の灯のもと

音を立ててこの身を寄せていく


壇上の永遠は人に語りかける

「汝ら常に我と共にあり」

しかし永遠は人の涙の重さを知らない

傷口から溢れる血の妙味を知らない

だからこそ私は生きる

絶えず吹きすさぶ風に

小さな根を張って生きるのだ


はち切れそうな金木犀キンモクセイの薫りに

落ちたの実が少しずつ彩られていく

蟻がくわえる僅かなかて

ひいては大きな楽園の種子となって我が身を誇る

何故に人の血潮が

虚無の穴蔵へのみ転がり込むなどと言えようか

何故に宇宙そらの彼方のもう一人の私が

自分の落ちた心を救わぬなどと言えようか


生きよ 君よ

どこまでも大切な空の果てに

いつまでもその勇気の腕を伸ばしながら

約束された雄々しき朝の

さらにその遥か向こうまで


どうか 生きよ

命という 限りなく痛ましい奇跡の中で





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