宥和の勇者 ―結ばれた手と手―
noyuki
結ばれた手と手(ハンズアンドハンズ)
序章
世界を変える脈動
光が満ちようとしていた。
光を放っているのは床に描かれた
床の魔法式を囲むのは五人のローブを着た人影。下はまだ十八歳にもいかないだろう少年から上は
魔法師達の呪文の詠唱が
玉座の間には魔法師達の他に数人の見届け人の姿があり、その誰もがこの国の行く末を左右する役職に就く者達だ。中でもここが玉座の間である
この日のため多くの月日と多くの資金が投げ打たれた。準備にかけられた歳月はおよそ十年にも及ぶ。最良の結果を出すために一切の
この儀式にはそれだけの価値がある、いや、あってなくては困る。
魔法式の光がどんどん強くなり、人々の陰影を濃くしていく。湧き出る光が窓から差し込む陽の光を押し返した。
魔法師たちの額に
全ては我らの未来のために。そのために彼らは命をかけてこの場に
室内に突風が吹き荒れた。魔法式の中心にあたる空間が歪み、そこからこことは違うどこかで生まれた空気が流れ込んでくる。
「おおッ――!!」
最初は点に過ぎなかった歪みはどんどん大きくなる。やがては人が通れるほどの大きさへと。
歪みの先がどこへ繋がっているのかは誰も知らない。にも関わらずその先に確かな希望が存在することをこの場にいる誰もが確信していた。
魔法式の放つ光がいよいよ直視できないほどに強まった。儀式は
ドクン、と何かが脈打つような波が起こった。見えざる波が玉座の間から城壁を越え、国を越え、世界へと広がり、そして――
ドカッ――
それは、奇跡が為された音にしてはあまりにもありふれた音だった。
純白のカーテンが視界を覆い隠した時、何かが歪みから現れて玉座の間に敷かれた赤い絨毯の上に落ちた。
光と突風が嘘のように収まり、絨毯の上に描かれた魔法式が焼けついて若干の
「あいたぁ……」
徐々に白光に
「おお……成功だ!勇者召喚は成功した!この者こそ我らの未来だッ!!」
その一言で王以外の見届け人達からも喜びの歓声が上がった。
だがその歓声の中心にいる何かは、何が何やら分からず
「さぁ、勇者よ。立ち上がるのだ。
王の言葉にその勇者は右を見て、左を向く。そして自分に語り掛けられているのだと分かってゆっくりと王を見上げた。
その勇者と呼ぶにはあまりにも小さく、
「――勇者?うちが?」
墨を流したかのような背中まで伸びる黒髪、
年齢は多く見積もっても十六には届くまい。せいぜい十四、五。見る者によってはもっと下に見られるかもしれない。
その勇者というにはあまりに可愛らし過ぎる少女は、召喚されて尻もちをついた体勢のまま、もう一度周囲を見回してぽつりと呟いた。
「……えらいよぉでけた夢やなぁ……」
かくして勇者は召喚された。
この物語は、こうして勇者となった少女が
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