第31話 リネハン伯爵邸の夜会の後 リナの後悔

 私はお屋敷にアルフレッドから連れ帰られて、自室で養生していた。

 もともと、軽傷程度の怪我、しばらくすると身体の方は元気になってきていた。


 今は自室のベッドで、王室からの手紙を読んでいる。

 誰にも知られるわけにはいかないので、父が直接持ってきてくれた。

 手紙を読んでいるうちに、自分の顔から血の気がひいていくのが分かる。


『王太子殿下の暗殺未遂及びエイリーン誘拐の罪で、リネハン伯爵家、夫妻及び直系子孫を斬首刑に処す。セドリック・クランベリー及びアルフレッド・ポートフェンは本来なら自宅謹慎処分のところを3つの条件に該当するため無罪』


 私には、この公文書を見ただけで裏で何があっていたか、分かってしまっていた。

 ジークフリートやセドリックが、何であんなにエイリーンに近付くなと言っていたのか。

 エイリーンが、なんであんな人目のあるところで、わざわざセドリックの話題を私にしてきたのか。

 私は、助かるはずだったの命を、処刑まで追い込んでしまったのでは無いの?


「リナ……大丈夫かい?」

 あまりに青ざめて、カタカタ震えているリナに、心配そうに父が声をかける。

「大丈夫です。お父様」

 もう、条件反射になってしまった返事だ。

 こんな事をやらかしてしまっても、涙も出ない。


 何が助けたい……だ。ゲーム感覚で。人の命がかかってることも知らず。

 年上だから、空気読めるからって……。

 完全に頭が浮かれてしまっていた、バカ女のおごりだ。

 ここは、ゲームでは無い。

 ゲームなら、リセットやセーブ地点まで戻れば、やり直せるけど。

 現実では、リセットやセーブ地点なんて救済処置は無い。




 しばらくは、呆然と何も考えられずに過ごしてしまった。

 その間に、兄たちがやってきて慰めに来てくれたような気もするし、セドリックがお見舞いに来てくれたような気もする。

 家族もセドリックも……誰も私の事を責めない。優しくされるばかりで、余計辛かった。

 王太子殿下が言った、唯一私を責めた言葉が、救いになるくらいに。


 王室から、再度手紙が来た。

 今度の手紙は、王宮の国王陛下の執務室へ来るようにとの呼び出しだった。

 私は応じる為に、侍女達に支度するように頼む。

 まだ、刑は執行されていない。

 私は自分がするべき事を、するために王宮に向かった。

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