シンデレラ・サクセスストーリー~私、やらかしてます~
松本 せりか
本編
第1話 お願い誰か夢だと言って
幸せな夢を見た。
イケメンな王子様達やその側近達に囲まれて、今やっている、乙女ゲームそのものの場面。
現実があまりにもアレなんで、神様が夢だけでも……って、ご褒美くれたんですね。ありがとう。
柔らかな日差しが心地よく。レースのカーテンがふぁっとたなびく。
春先の暖かな風が……って、私、窓開けっ放しで寝た?
焦って、ガバッと飛び起きたら
「おはようございます。お嬢様」
と、ベッドのそばにメイド服が……もとい、見覚えのある侍女が……。
「マ……マリ……ア?」
「なぜ、疑問系なのか存じ上げかねますが」
無表情にこちらを見てた。
い……や……夢? まだ夢の中?
私は、無造作に右手を顔の高さまで上げて、思いっきり自分の顔をひっぱたいた。
いったー、たた。痛い。夢じゃ無い。
「お……お嬢様?」
いつも無表情なマリアがさすがに慌てていた。
「どうなさったのです?」とか、色々言っているけど、ちょっとそれどころじゃ無い。
画面越しに見覚えのある王立学園の寮の1室。マリアという侍女。
ここが現代の日本じゃ無いことは明白で……。
現実の私、今どうなっているの? 死んだの? 確かに、連日忙しかったけど。疲れも、ピークにたまってたけど。過労死するほどじゃ、無かったと思うんだけど、多分。
もう、頭パニックだよ。
頭の中を整理しよう。
私こと、吉岡里奈。31才。営業職。
今でこそ難航しそうな難しい案件も任せてもらえるようになったけど、総合職になった当初はひどかった。
取引先だけじゃ無く、社内も敵だらけ。
会社で男が優しいのなんて、20代前半の一般職女性にだけだ。
やっと、小娘だの、上司の男性呼んでこいだの言って軽くあしらわれなくなった。女だからといって、セクハラまがいやバカにする奴らはいるけど、性別は変えられないので仕方ない。
日本の企業は、まだまだ男社会、男性以上に頑張って、肩肘張らないとやってられない。
ストレスもたまるってもんだ。
そんなこんなで、昨夜も帰って早々シャワーを浴び、軽くなんかつまんでふっかふかのベッドの上に転がって、ゲームの世界にGO。
今流行の……流行ってんのか? なんせ若く無いんで……乙女ゲームの世界へ。
ゲームの主人公達は良いよなぁ。
私が捨ててきた、可愛らしさとか、いじらしさとか、男性への無条件な信頼とか……いや、よそう。空しいだけだ。
今だけは、ゲームの中だけは、私もそうありたい……ってか、選択肢がそれしかないし。
少し反抗しても、イケメン達が「そこがまた可愛いんだよな」とか思える程度のものだし。
乙女ゲームの中には俺様キャラ物やうつ展開の物もあるらしいけど。現実世界に俺様キャラはあふれてるし、仕事がうつ展開もどきになりかける時もあるのでパス。
私が好んでしているのは、現実離れした優しいイケメン達が、かよわくも頑張り屋な主人公を助け、ハッピーエンドに導いてくれるというものが多い。
明日は、久々のお休み。思う存分ゲームするぞーって、寝落ちするまでゲーム楽しんで…やたらリアルで、幸せな夢を見てたはず何だけど……な。
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