第3話 わたし

新しいクラスでもわたしの席は1番後ろ。


宗くんの席はわたしの2個左の1つ前。


だから宗くんにわたしが見てても気付かれないし


周りからも宗くんを見てるって気づかれない。


だからついつい見ちゃうんだと思う。


宗くんはずっと窓の外を見てる。


何か面白いことでもあるのかな?


あ、ちょっと曇ってきた。


雨、降るのかな。


雨は嫌だなあ。


小さい頃、雨の中迷子になって、


びしょ濡れになって泣きながら家に帰った時の


嫌な思い出が忘れられないのかな。


でも、あの時どうやって帰ったんだろう。


たしか、カッパを着た男の子が


手を引いて街まで連れてきてくれたんだった。


フードを深く被って、


話もせずに泣いてるわたしの手を


同じくらい小さな手で引っ張ってくれたんだ。


あれは結局誰だったのかな?


顔も見えなかったけどきっと優しい人なんだって


少し好きになったのを覚えてる。


そう考えたら雨の日も悪くないかもしれない。


今日は少し濡れて帰るのも悪くないわ。

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