第3話 悪役令嬢ギルドはどこだ!訴えてやる
まずは、第一王子との婚約解消もあの手この手で試みた。
ところが、王家と結んだこの「契約」は、公爵家の娘の一存では覆せない。
パワーバランスは、王家を頂点として滝のように垂直だった。
身分制度、王制、おそるべし!
そもそもこの婚約自体が、「うちの子ちょっとおバカだからしっかりした婚約者を」と王妃様が前のめりで結んだ婚約なのだ。
私の意見など関係ない。
あれ?おバカさんを押しつけられた私ってけっこうな被害者じゃない?
この国の第一王子であるバロック様はサラッサラの赤髪で、凛々しい茶色い目のイケメンで容姿だけは素晴らしい。
むしろそれ以外に取り柄なんてない。
子供の頃は、大きな態度も生意気な口調もまだかわいかった。
『おまえは母上が決めた相手だから、仕方なく妃にしてやるぞ!』
そんなことを言っていたガキんちょは私と同い年で、十六歳になった今でもその尊大な態度は変わらない。
自己中心的な考え方で、お勉強や剣の腕はそれなりだけれど、残念ながら中身は傲慢で女癖も悪い。
私のことは見た目を気に入っているらしいが、たくさんのご令嬢を侍らすのが好きな方で、婚約者がいても多くのご令嬢と浮名を流している。
パーティーで会うと、「おまえもこの輪に入りたいのか?そうだろう」みたいな態度で本当に嫌。
ヒロインに出会い改心するはずだけれど、今のところはなんとも残念な仕上がりだ。
最近は私のことをいやらしい目で見てくるので、こんな王子と結婚するなんて心の底からお断りする。
バロック殿下を更生させるのは、私には無理だった。だって愛がないもの。
早くヒロインに差し上げたい。
ご祝儀は、マーカス公爵家から城が買えるくらい包んだっていい。
絶対に、穏便な婚約解消を!
そう思った私は、学園に入学したら初日からヒロインを説得し、堂々と愛を育んでほしいと思っていたのだ。
それなのに、悲劇は起きた。
「なんでいないの!?ヒロインがいなきゃ、殿下をもらってくれる人がいないじゃない!」
淡い水色の髪を振り乱し、私は絶望に打ちひしがれる。
だいたい、ヒロインがいなきゃ私って何なの!?
悪役令嬢、あまっちゃった!
こんなのおかしい!
悪役令嬢ギルドとかあったら、異議申し立てするレベルの事態だ!!
豪雨のように流れる涙。
さめざめ泣くというお嬢様らしい雰囲気ではなく、男らしい涙であることはこの際気にしないでおこう。
前世で受験に落ちたときだってこんなに泣かなかった。
「ううっ……!嫌、あんな王子と結婚したくない。そして死にたくない」
床にペタンと座り込み、涙を流す私。
でもここには、私の涙を拭ってくれる人がいた。
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