裸の女
「お侍さん。ねえ、お侍さんてば!」
「起きてる……のよね?」
何かの悪ふざけなのだろうか。
相手が裸なのは百も承知ではあるが、このままでは、とてもらちが明かない。おみつは思いきって、掛布団を勢いよくめくり取る。
「お侍さん、いいかげんに起きて………………って、ええっ!?」
裸だった。
少しばかり肌が浅黒い、髪の長い裸の女が、男の股間に埋めた顔を小刻みに動かしていた。
握り固められた右手の指と深紅の唇から、淫猥な吸い付く音と
おみつは、そんな光景に目を丸くして驚いた。
女が男に何をしているのか、詳細まではわからなかったけれど、居なかったはずの裸の女の出現に、ひょっとして、ここまでの出来事すべてが
眠る男が小さく
そのままじっとして動かない女の丸められた背中を見下ろしつつ、おみつは「あの」と小さく声をかけてみる。
「あ……朝御飯が……作ったんですけど……食べます……?」
そう言い終えるまえに、女はおみつに美しい顔を向ける。
歳はおみつよりも、十ほど上であろうか。
少しばかりのつり目、紅潮した頬と艶やかな唇が、大人の女の色気を十二分に醸し出している。
「朝御飯? もう食べたから要らないわよ」
女が突然ケラケラと狂ったように笑いはじめたので、一応、おみつも顔だけ笑ってみせた。
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