最強デュエリスト、異世界に降り立つ④

世界もルールも知らない僕だけど、カードならば負けはしない!

異世界デビューのため、華々しく強盗現場に躍り出てしまった!

もう後戻りはできない!




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「あぁん?この辺境に、まだ俺サマに逆らう奴がいたとはな」


野党が僕の胸ぐらを掴み、凄む。

心臓が爆発しそうだ。

現実世界でだって、こんなガラの悪い相手に見得をきったことなんてなかった。


頼む、カードバトル異世界であってくれよ!

心の中で叫ぶ。

野党はながら、ナイフを取り出し、舌舐めずりをした。


焦っている様子を、顔に出してはいけない。

勝負は始まっている。

ポーカーフェイスは基本中の基本だ。

精一杯、虚勢をはってでも言い切れ。

そう、物語の主人公のように!


「僕と【決闘ドゥエル】しろよ」


かなり緊張したが、声も震えずに、舌を噛むこともなく言えた。


安堵する間も無く反応を伺うが―――辺りの空気は凍ったようだった。

野党も少女も、言葉の意味が分からないかのように、ピタリと固まってしまった。


(違うのか?カードの異世界じゃないのか―――!?)


祈るような気持ちで、さらに心の中で叫んだ。

それでも表情は崩さず、目はまっすぐに野党の目を射抜く。

伝わっていないのか?言い返してこないのか?


永遠に思えるような一瞬の沈黙を破ったのは、挑発された野党だった。


「辺境のザコが、俺サマに向かって【決闘ドゥエル】だと?俺サマを残虐非道、辺境の大盗賊アイオーンと知ってんのか!?」


野党―――アイオーンの顔がみるみる紅潮していく。


「いいぜ、【決闘ドゥエル】してやるよ!」


アイオーンがナイフを振り上げると、光とともに彼の手中に【バインダー】が現れ、構えをとった。


(―――よし!読み通り!カードバトルだ!)


ゲーム開始の合図も分からない僕は、同じように【バインダー】を構える。


(まずはゲームに持ち込むという、第一条件はクリアできた。あとはルールを把握しつつ、この野党に勝たなければ…!)


難しい条件だ。

でも不思議と胸が高鳴る。

いつ以来だろう、こんな新鮮な気持ちでカードを持つのは―――!


僕とアイオーンの目が合う。

準備はできていると言うかのように、二人で同時に吠えた。


「「【決闘ドゥエル】!!」」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




■用語説明

①【決闘】

-けっとう。ドゥエル。デュエルではない

-この異世界のルールで、カードゲームでバトルし、決着をつけること

-少女らが住む国【神教国カルディア】では、この強弱で身分や貧富も決まる

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