最強デュエリスト、異世界に降り立つ②

逃げる少女。

追う野盗。

そこに、少女を救うように颯爽と現れた青年!

彼こそ、自称、最強デュエリスト!




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




逃げる少女と、それを追うガラの悪い男。

難しく考えなくても、自分の置かれている状況は微塵も分からなくても、容易に状況は推し量れた。


「これで俺サマも、騎士サマの仲間入りってわけだあ!ヒャーッハッハッハ!」


大声で笑う男を見た。

考える間も無く。それはもはや反射的に。


「それはどうかな!」


言葉は口から発せられてしまった。

もう後戻りはできない。後悔しても仕方がない。

こうなったら、出たとこ勝負だ!

僕はそう決意して、隠れていた木影から身を翻した。




〜〜〜〜〜〜時は少し遡る〜〜〜〜〜〜




気付くとそこは、森の中だった。

インドア派の僕は、キャンプにきた覚えなどなかったので混乱した。

そう、この【本】に気付くまでは。


【本】は淡く光っていて、触ると頭の中に音が響いた。

その音はまるでチューニングの合わないラジオのように雑音だらけだったが、いくつかの単語が聞き取れた。


「………助け………貴方………喚んだ………世界………カード………」


音は途切れ、【本】の光も消えた。

不安を振り払うように、僕は独りごちる。


「これは、アレかな。最近流行りの、異世界転生?いや、生きてるから転移なんだっけ?ああ、そこはいまはどうでもいいか。…で、さっきのチュートリアル?不具合なのか上手く聞き取れなかったけど、まさか、あれで説明は終わりかい?」


問いかけてみたが、応えてくれるものはなかった。

…仕方がない。文句を言っても、待っていても、状況がよくなるわけではないのだ。

さっきまで光っていた【本】を見る。

しっかりとした革の表紙、模様が描かれており、豪華とは言わないが、シャレているように見える。アンティークの雑貨屋に置いてありそうだ。


何か書いてあれば、この状況を把握できるかもしれない。

かすかな望みをもって、少し重みを感じる本の扉を開いた。


「こ、これは―――」


知っている。僕はこれを知っている。

中のページは、9つに分かれたポケットのような形状になっている。

ほとんどのポケットは空だけど、いくつかは絵柄や記号が書かれた札が収まっていた―――


―――これは、カードバインダーだ!




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




■用語説明

①カードバインダー

-所持するカードをコレクションするために使うもの

-主に収納したカードを観賞するために使う

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