第92話 僕は恵まれて

僕は恵まれていた


そう気づいたときには

それは過去のものになっていて

もう取り戻せないと落胆らくたんした


でも僕はまだ恵まれていた

僕の周りには

たくさんの小さな幸せがあって

手を伸ばせばいくらでもつかめたから


無くしたものは大きかったけど

僕はまだ幸せになりたかった


だから探した


小さくても

ささやかでも

幸せと呼べるものを


そしてつぶや

「僕は恵まれている」

と……

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