「壁ドン」


 ぎりっ。

 目の前より高い所から歯ぎしりが聞こえて、なんとなく笑いそうになった。もちろん自重したが。


「家畜、貴様妾のことを差し置きなにを考えておるか!」

「別に、なんでもいいでしょう」


 壁に押しつけられた背中、指を絡ませて顔の横で動きを封じられる。

 はて、これはもしや恋人繋ぎというものでは?


「家畜!」

「はいはい」


 いまは一から十まであなたのことしか考えてませんと言えば、目の前の彼女は満足するのか。なんて戯言。

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