第16話 その十六

 今日はお母さんと出かけてくるからといって、お父さんとお母さんは家を後にした。

 家の掃除をしていたら男の人が訪ねてきたのである。

「薬はいりませんか」

 見るだけ見ようと思って返事をした時。

 背負っていた箱の中から短刀を取りだして動くなと脅された。

 腕を後ろ手に捕まれて首筋に短刀を突きつけられる。




 おかしな様子に氣づいた。

 ジークとの稽古をやめて、家の方に行ってみると男がマリアを捕まえていた。

 怒りに我を忘れそうになるのを必死で押さえつける。

「マリアを離せ」

 総一は怒鳴った。

 マリアを守らなければ。

俺がマリアを守るんだ。

「何が目的だ」

「お前だよ王子様」

「私か」

 ジークが答える。

「いや、俺だろ」

総一が答える。

「黒髪の方だ」

ほらな。

「抵抗はしない。マリアを離してくれ」

 男の要求通り総一はジークに手首を縛られる。

 マリアと入れ替わりに交換された。

総一はみぞおちに膝蹴りをもらう。

 膝が崩れる。

 廻りには五人ほどの男がいた。

 一人が総一を抱え上げて走り出す。

 ジークは三人と対峙している。

 マリアが追いかける。




ジークが縄をゆるくしていたおかげで総一の手首は自由になっていた。

 崖の手前について総一はもがいて抵抗をした。男はたまらず総一を投げ下ろした。

 総一は地面に転がる。

男が総一を突き落とそうと迫ってきた。

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