リズムゲーム・スターゲート

アーカーシャチャンネル

ファーストステージ

第1話:始まりは、同じような光景から

 音楽を演奏し、ある時にはハイスコアを叩き出し、またある時には周囲のギャラリーが歓声を上げる。それがリズムゲームだ。

令和となった現代において、リズムゲームは誕生から二十年以上は経過しているだろう。それでも、その人気が衰える事はなかった。

その機種の形状には様々な種類があり、実際に音楽を演奏している様な体験が出来る機種はゲームセンターに設置された機種に限定される。

 その一方で、近年は難易度のインフレや収録楽曲的な事情――他にもあるかもしれないが、ここ近年は低迷していると言われている。

時代は変わっていくのだろう。埼玉県草加市がゲームコンテンツで聖地巡礼を行おうと様々な改革を行い、ここ数年の観光客を呼び寄せている現状からすれば――。

【真相はまとめサイトで分かる訳がない】

 この記事に付けられているコメントは端的に、言いたい事をはっきり表現している。

それ程にまとめサイトの情報は信頼されていないのだ。所詮、コピペ情報しか載せていないという意味かもしれないが。

特に草加市ではまとめサイトでも公認されている物もあり、そこでの情報は信用出来るという声もある。



 ノートパソコンに表示されたWEBサイトの文章を見て、即座に反応するような人物がいるのか――疑問が出るのは言うまでもないだろう。

SNS上でも『WEB小説に過ぎない』とか『PV稼ぎのフェイクニュース』と揶揄する意見も多い。それ位に、掲載されている場所にも問題があった。

それは――まとめサイトだったのである。大手の物ではないのだが、単純にまとめサイトなだけで否定的な意見を出して炎上させるケースも存在するだろう。

だからこそ、草加市はまとめサイトに対して様々な対策を出して抑え込みを行っているのかもしれない。

この光景に関して言えば、異様と指摘するコメンテーターもいれば、草加市の事例だけを叩くのはおかしいと擁護するサイト管理人もいる。

つまり、この様子は――ある意味でもSNS炎上と変わりないような光景なのだ。



 次の場面は、明らかに草加市の何処か――屋外に見える。

そこには影にしか見えないようなモブが何かをスマホで書きこんでいるような様子が――映し出されていた。

スマホの画面らしきものには、何かの掲示板的な画面が表示されているようにも思えるが――?

【結局、全ては繰り返される。人気ジャンル以外でブレイクと言うのはあり得ないのだ】

【日本のWEB小説が異世界転移や異世界転生、他のサイトでも二次創作が――】

【我々の世界だって同じ物だろう?】

【WEB小説のブームも一周しているのでは? 時代が求めているジャンルは、もはや分かっていて特定ジャンル叩きに――】

【どちらにしても、時代は特定ジャンルに媚びている。売れるジャンル以外は終わっているのだ】

 まとめサイトに書かれているコメントは、明らかに煽り属性が付いている物ばかりが目立つ。

こうしたコメントも一種の不正手段でコメントが書かれ、それこそあるジャンルが売れるように仕向けているとも判断出来る物ばかりだ。

そうした状況が数年間続いた結果、日本のコンテンツは最大のピンチを迎えている。

このモブキャラの正体は、SNSを炎上させているユーザーだった。こう言った物を見せつけられては、さすがに周囲も黙っていない。

しかし、それに切り返しをしようと言う人物は――。



 ゲームセンターで、まさかSNS炎上ネタを見せつけられるとは――。そう思うギャラリーは多いだろう。

しかし、これはリズムゲームのストーリーモードなのだ。誰もが驚くのは言うまでもない。

「アクションゲームのストーリーでも、ここまでメタな物はないぞ」

「FPSだと、こういうストーリーは見ない。題材的な問題もあるのかもしれないが」

 その様子を見ていた数人のギャラリーも少し小声で話をするが、その内容に衝撃を隠せないでいる。

その様子を通りかかった青年も、珍しいゲームがある程度の視線だったが――。

(見た目は、楽器類をイメージした物とは違うか)

 彼はストーリーよりも、リズムゲームの筺体を気にしている様子だった。

更に言えばプレイしている様子矢周囲のギャラリーよりも、筺体の形状に驚いている。

周囲のギャラリーと比べると、身長は一七五センチで目立つような服装でもない。髪型も黒髪ショートなので、同化してしまっているのだろう。

ゲーセンにはアニメやゲームのコスプレイヤーもいるので、逆に地味な服だと目立つ可能性も否定できないが。

(ここ最近は楽器型のコントローラーよりも、ああいった家庭用等に移植前提な物が――)

 この時は足を止めただけで、あっさりと別のゲーム筺体の場所へと移動した。

興味がわかなかった訳ではなく――別の理由だろう。

「まさか――西雲ハヤトか?」

「あり得ないだろう。オールラウンダーなゲーマーだというのは、否定できないが」

「リズムゲームはイースポーツとしても、あまり盛り上がっているとは思えない」

「そこに彼が介入する余地はない、と」

 ギャラリーの一人が先ほどの青年に見覚えがあり、その名は西雲にしぐもハヤトであると――。

周囲のギャラリーも西雲の噂には覚えがあったようで、それを語るのだが――彼はその声に耳を傾けるまでもなく別の筺体を見ていた。

(日本はイースポーツで出遅れている。それでも、草加市は盛り上げようと動いていた)

 イースポーツ、それはコンピュータゲームをスポーツの一つとして盛り上げようという活動の一つ――と言うべきか。

最近は何も理解していないような企業が便乗商法のようにイースポーツ団体を立ち上げるが、こうしたノウハウのない企業は脱落していくのが現実だ。

(どちらにしても、今は――)

 西雲の職業はゲーマーである。公認のゲーマーと言う訳ではないが、草加市では一定の理解が得られており批判の的になる事はない。

過去に何度か様々なゲームでゲーマーが草加市を盛り上げたという事実は、市民にも確実にゲーマーの認識を改めるに値する物だった。



 一時間位は様子を見たりしていた西雲は、ゲーセンを後にして――自宅に戻る。

ゲーセンの駐輪場に置いた自転車のロックを解除し、自転車に乗った。帰り道でも様々なゲーマーがゲームをプレイしている。

草加市では拡張現実と言う技術を要したARゲームも地域振興に活用しており、太陽光発電や道路の自動清掃システム、洪水対策の施設等――。

明らかに草加市が他の市町村よりも自然災害対策や環境にも配慮したシステムを樹立し、その技術を得ようと様々な都道府県から派遣されている議員もいるという噂もある。


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