1-16.16話「激斗・プロフェッショナル」

 『アニメージュ』vol.23(80年5月号)内の脚本家インタビューで、今回の脚本の山崎晴哉は「ダイゴは本質的にはシリアスなキャラだが、(略)おどけて二枚目半のキャラを演じ、自分も周囲もひきたてていると思うのです」と語っている。「この特異なダイゴのキャラを脚本にどういかすかで苦しんでいます」という山崎晴哉の手腕をシナリオを参考に見ていこう。


16話「激斗・プロフェッショナル」 1980年1月20日


 脚本     :山崎晴哉

 演出     :古川順康

 作画監督   :宇田川一彦


あらすじ


 エリアスは、毒魔大帝統の作戦でヴィクトールタウンにつながるダムを破壊し、水の供給を絶つ。ヴィクトールタウンから住民を追い出し、「プロジェクトX」の探索を自由に進める目論見だ。困っているダイゴたちの前にトロス・クルスが現れた。自分を金で雇えば水を引いてくると言うのだ。前回のことがあるダイゴは信用しないが、アンノンジーの決断で雇うことにする。彼の作戦は、グリーン・レイクという湖の水を枯れたクリークに流し込みヴィクトールタウンへと水路を作るという物だ。アンノンジーの命令で、ダイゴが目付役として同行することになった。

 トロス・クルスは5人のプロフェッショナルを助っ人に呼んでいた。投げ縄のカーボ、ナイフ使いのマック、爆薬のプロのダイナ、ミサイル機関砲の名手マーチン、そして怪力フランクだ。7人は夜を徹してマドクターの支配する山岳地帯を通り抜けようとしたが、ダイゴが見回りの兵士につられてあくびをしたため見つかってしまう。マックが兵士を暗殺したため事なきを得るが、翌日吊り橋を渡るところでマドクター兵達に取り囲まれてしまう。トロス・クルスは兵のリーダー、ポルスキーと面識があり、銀行強盗に行くと言いくるめる。だがポルスキーはトロスを信用していなかった。ポルスキーからの報告を聞いた毒魔大帝統は、トロス・クルスの抹殺を命ずる。

 その頃、グリーン・レイクにマドクター反応があることに気づいたサオリ達は、ダイゴもいることに動揺する。サオリはゴーディアンを運ぶようロゼとチョコマに命ずる。

 グリーン・レイクに着いた7人だが、マドクターの攻撃に仲間達は次々と倒れていった。なんとか発破の準備は整ったが、生き残りはダイゴとトロスだけだ。そこにゴーディアンを連れたロゼ達が。ゴーディアンに駆け寄るダイゴは身分カードを落としていった。拾い上げたトロスは、彼の名字が「オオタキ」であることを知り、あることを思い出す。かつて自分が別のガンマンだと勘違いし、撃ち殺した男。彼はいまわの際に「大滝京太郎」と名乗った。トロスはダイゴの父親の敵だったのだ。

 ゴーディアンに乗り込んだダイゴは、バルバダスが発進させたハゲタカ型メカ、バケダーガと戦う。バケダーガの火炎に苦しめられるゴーディアンだが、耳を取り外してメリケンサック状にしたガービンフッカーで目を潰し、耳を先端につけたマイティライボーで倒す。戦闘の最中、湖の発破に成功したトロスは水流に流されていった。ダイゴは「トロスとその仲間たち、みんな、素晴らしいプロフェッショナルだった。男の中の男だった」と弔う。

 しかし、トロスは生きていた。ダイゴの登録カードを見つめ、皮肉な出会いに自嘲するのだった。


解 説


 シナリオ原題は「激闘・プロフェショナル」。

 水を得ようとして井戸を掘るメカコンだが、石油ばかり出てくるというのは西部らしい。クリントはオイルスープに困らなそうだ。

 トロスの登場時、ダイゴが渇きのあまりダルフの流れる汗を吸うシーンがあるが本編ではカット。

 プロフェッショナル達、シナリオではフランクではなく、風船使いのフラリンというキャラが登場。風船は触れると爆発するようになっていた。

 吊り橋の途中で嵌るダイゴのシーンはシナリオにはなし。ここでメカコンの制服を着ているとポルスキーに疑われるダイゴだが、私服なのにおかしい。ここでトロスがダイゴを突き飛ばすシーンもシナリオにはないが「勧進帳」を意識したのだろうか。

 道中フランクが撃たれたカーボを背負うが、シナリオではクリントに乗せられる。その後の谷渡りでカーボがあえて無言で落ちるシーンは視聴者に大きな印象を与えたようで、現在でもネットで感想を見かける。

 大滝京太郎との対決シーン、シナリオでは町中、無抵抗で撃たれているが、本編では荒野で、京太郎が懐から幼いダイゴの写真を出そうとしたのを抜き打ちと勘違いして撃ってしまうというシーンになっている。

 バケダーガは本編では召還したように現れるが、シナリオではマドピューターが合体して変形するように書かれていた。バケダーガへの止めもシナリオでは剣。アニメ本編ではガービンの耳をメリケンサック風に使っているが、シナリオには記述なし。ただし、『テレビマガジン』80年3月号ではこの武器を「ガービンフッカー」と記している。

 シナリオではラスト、トロスが後金をもらいにやってきて、登録カードを置いていく。

 今回大滝博士のフルネームが明らかになる。「京太郎」はシナリオの表記だが、当時のアニメ雑誌記事にも明記されているので公式で間違いないだろう。

 次回予告はこの回だけのトロス・クルス。

『運命ってのは全く皮肉なもんだぜ。誤って殺しちまった大滝京太郎の息子がダイゴだとはな。折も折、マドクターがヴィクトールタウンの一角を占拠して、俺はダイゴ坊やにガンマンの心得をたたき込む羽目になっちまった。次回、闘士ゴーディアン「闇に挑むガンマン」でまた会おうぜ』


こぼれ話


 『テレビマガジン』はOPのテロップにも出ているタイアップ雑誌だが、ゴーディアンの記事は少ない。しかし渡辺正美のカラーグラビアが80年2月、3月号に掲載され、ポピーの商品パッケージや講談社の図鑑等に流用されている。「力のガービン、わざのデリンガー、スピードのプロテッサー」というフレーズもこのグラビア記事から。80年2月号では、「"デラックスゴーディアン合身"まもなくはつばい!!」という懸賞予告があり、年末年始に超合金ゴーディアンの発売が間に合わなかったことが窺える。

 3月号では「ゴーディアンの4大メカ兵器!」というタイトルでシャインシェルド、レザースクリュー、ガービンフッカー、脚部ミサイルを紹介。この絵でのガービンフッカーは耳の角が付いたまま使っているので矛盾しているが、超合金の武器も耳を外さず別アイテム扱いだったので準拠したのだろう。レザースクリューもデュークスクリューを片手に持って使用しており、デュークスクリューの変形という解釈ではなかったようだ。脚部ミサイルは「わずか0.5秒で、大型トラックを30台をふきとばす」と説明されている。


 同時期に発売された『月刊アニメーション』3月号では、『OUT』編集等で活動していた大見雅彦が「もしかするとゴーディアンは巨大ロボットの集大成となる作品かも知れない」という記事を掲載している。巨大ロボットアニメの歴史を総括する内容で、ゴーディアンについて「未来ウエスタンとしてのアクションを前面に押し出しながらも、物語の全体像を、今、しだいに見せ始めている」「ひょっとすると、過去の"巨大ロボット・アクション"のすべてを包容してしまうようなことになるかもしれない」と期待を込めて記している。だが、硬派な評論系アニメ雑誌だった『月刊アニメーション』はゴーディアンの完結前に休刊してしまい、行方を見届けることはできなかった。

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