第19話 帰りましょう 送りましょう
店を出て歌舞伎町の裏路地を歩き靖国通りへ出る。
24時近いというのにまだまだ人で溢れている新宿。
むしろこれからの方が多くなるのかな?
店を出た時は美樹さんに肩を貸しながら歩いてたけど、いつの間にやら俺の腕に抱きつくような形でふらつきながら歩いてる。
ニコニコしながら機嫌は良さそうだが
『あの。。。胸が当たるのですが。。。』
『あ、その上目使い破壊力が強すぎるのですが。。。』
など理性を働かせることに努めながら普段の倍近い時間を掛け新宿駅地下街へ。
平日でも終電が近いという事で駅もまだまだ人は多い。
「美樹さん 改札通りますが定期とか出せますか?」
「ふぇ?定期?大丈夫ですよぉ〜」
鞄からスマホを取り出しふらつきながらも改札にタッチして通り過ぎる。
俺も後を追い改札を通ると当たり前のように再度腕を組む美樹さん
『普段おとなしいけど酔うと積極的になるのか?』
等と思いながら、JR内通路を経由し京王線改札へ
「府中でいいんですよね?」
「ひゃい 生まれも育ちも府中です!」
微妙に質問の意図から外れている気がするが、あえて突っ込まずとりあえずよしよしと頭を撫でてみた。口元を緩ませ何だか気持ちよさそうにしている。う~ん可愛いw
「じゃ美樹さんあの電車乗っちゃいましょ」
「は〜〜い」
府中なら特急も止まるので、発車待ちの電車に乗り込んだ。
特急なら20分程度だ。家は駅から遠いのかな?
車内は混んでいたがドア近くのスペースに入れた。
「駅に着いたら家の人に迎えに来てもらいますから後少し我慢してくださいね」
「えぇ〜もっと広木さんと一緒に居たいですぅ〜」
上目使いで甘えてくる。
何だか甘えんぼうモードに入ってるんだろうか。。。
「明日も仕事ですし、今度また時間作りますから何処か遊びに行きましょ」
「約束ですよ〜 週末楽しみにして待ってますよ〜
あ、後広木さんのお家もよろしくです〜!」
おぅ今週末に決まったのか!
特に予定は入れてなかったけど何処行きゃいいんだ?
普通にデートスポットとか行けばいいのか?ベタにカラオケと食事とかの方がいいのか?
頭の中での妄想を巡らせていると美樹さんが俺の方が寄りかかってきた。
『ん?もしかして寝てる?』
とりあえず電車の揺れで美樹さんが倒れない様に恥ずかしいながらも背中に手を回し美樹さんを抱きとめた。これ、はたから見ると抱きしめているような体制だよなぁ〜
穏やかな寝息を立てる美樹さんの寝顔をみてほっこり気分に浸っているとあっという間に府中に到着。
「美樹さん 降りますよ」
「う〜ん 着いたぁ?」
「はい 着いたのでおりますよ」
フラフラした美樹さんを支えホームに出る。
府中で降りるの久しぶりだな。
とりあえず改札を出て駅前のターミナルまで移動し、かなめさんに教えてもらった番号に電話する。
出てくれるといいんだけど時間が時間だからなぁ〜
「はい。早瀬ですが」
と男性の低い声。お父様かな?
「夜分失礼します。美樹さんの友人で相原と申します。
新宿で皆で飲んでいたのですが、美樹さんが酔ってしまい足元が
危うかったので府中駅まで送ってきました。
住所は聞いているのですが、お宅までお送りすればよろしいでしょうか?」
「相原君か。。。ありがとう。美樹がご迷惑をお掛けしたね」
「駅前まで車で迎えに行くから少し待っててくれないか」
「わかりました。駅前の着いたらこちらの携帯まで連絡お願いします」
「わかった。多分5分くらいで着く」
おーー緊張した。
とりあえず迎えに来てくれるみたいだ。
美樹さん完全に寝入ってるし、身内の人が来てくれるのはありがたいかも。
しばらくして携帯が鳴った。駅前のロータリーに着いたらしい。
シルバーのプリウスαとの事。
あれかな?近づいていくと運転席から優しそうな男性が出てきた。
「相原君だね。美樹がお世話になってすまなかった
というか、完全に寝てるね。
そんなに飲んだのか?」
「カシスオレンジを3杯程度なのですが。。。」
「う~ん 確かに弱いのは知ってたが、まぁ相原君がいたから安心して
飲んだのかもしれないな」
「え? どいうことですか?」
「美樹は小学校から高校、大学とずっと女子校で今の職場も女性が多い。
性格も人見知りで社会人生活もそこそこ長いのに男性に対する免疫が
あまりなくてね。
仕事は大丈夫みたいだけど、男性を前にすると普通の会話が出来ず
悩んでたんだよ。
ただ、相原君とは何故か普通に話ができるって私たちに嬉しそうに
話してくれててね。
今回も仲のいい村瀬さんや折原さんだけじゃなく相原君も来る
ということで特別に遅くなるのも許したんだ。
まぁその想い人の相原君に送ってもらえるとまでは考えてなかった
だろうけどね」
何だかサラッと美樹さんの想い人とか言われちゃったけど、親的にもそれでよいのか?と考えていると
「さぁ立ち話してしまったが時間も遅いしそろそろ行こうか
ところで、相原君は家はどっち方面なのかね?」
「うちは調布と西調布の間くらいですね。最寄りは調布です」
「わかった。時間的に電車で帰宅するのは難しいだろうから近くまで送ってくよ」
「い いえそんな申し訳ないですよ」
「気にしなくて大丈夫だ。ここからならそれほど遠く無いし道も空いてるだろうからね」
中々あきらめてくれないみたいだし、終電で帰宅できないのは確かに事実なのでお言葉に甘えることとした。
美樹さんを後部座席に座らせ俺もその横に座りシートベルトを着けると同時に静かに車が動き出す。プリウスというか電気自動車はやはり静かだなぁ~
美樹さんのお父さんと仕事や友人の話などしばし話しているとあっという間に調布エリアに到着
「すみません。この辺りで大丈夫です。家すぐそこなので」
「そうですか。本当に今日はありがとうございました。
不束な娘ですが、今後とも仲良くしてあげてください」
「いえ、こちらこそよろしくおねがいします」
『おやすみ』後部座席で眠る美樹さんを見ながら車を降りる。
何だか今日は濃い一日だった・・・
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