カラオケで繋がる恋もある
ひろきち
第1話 プロローグ -出会い-
「いえぇーーーい お疲れーーー」
「じゃ皆さんお会計は飲み放題込み4000円でー
次回開催は来月の第3水曜7時からで!よろしくーーー」
都内某所のカラオケBar
今日は80年代に人気のあったバンド「ガボール」のカラオケオフ。
バンドは昨年惜しまれながらも活動を休止してしまったけど、ファンクラブにも入っていたBarのマスター香織さんがSNSで定期開催しているイベントだ。
ここ数年仕事に追われ、自宅と会社の往復の日々。
今年30歳になり、仕事はそれなりに充実はしていたけれど、学生時代の友人とも疎遠気味となり休みの日も疲れて何していいかわからないような状況だった。
もちろん癒してくれる彼女も居ない。いわゆるボッチな状態。
それでも忙しいんだから仕方ないじゃん!とか理由にしていたのが、4月の異動で比較的時間も取りやすい部署に異動になった。
自由な時間は手に入ったけれど何していいかわからない。。。
そんな時見つけたのが、このカラオケオフ。
カラオケは初心者だったけれど「ガボール」に関してはCDも全部持ってるしライブもほとんど参加。
それなりにマニアっくな事もネタも持っているつもり。
折角のチャンス。何かプライベートでも変わってみようとイベント告知を見て飛び込んでみたわけだけど、これが予想以上に楽しい!!
カラオケは勿論だけれど好きなバンドの曲を聞きながらマニアックな話も出来るのが凄い幸せ。
こんなことなら、もっと早く参加してればよかったと思うくらい。
「また来てくださいね」
ライブのラストで良く歌われていた曲が流れる中、香織さんに会計を済ませ参加者は店を出ていく。
Barの外。二次会に行く人や帰る人がいる中、とりあえず今日話が出来た人と連絡先の交換。プライベートでこういうのは久々でちょっと緊張する。。
「司さんと達也さんでしたよね。今日はお疲れ様でした。よかったら連絡先交換してくれませんか?」
とりあえず一番話が盛り上がった司さんと達也さんに声を掛ける。
司さんはこのオフの常連で、時々Barでバイトもしてるらしい。
「オッケー 広木さんだよね。ライブの話しとか話せて面白かったよ。来月も来ます?」
と司さん。常にハイテンションで楽しい人だ。
「多分大丈夫です。というか無理にでも時間作ります!」
はい。正直多分家にいてもやることないんで絶対来ます!
「あ、俺も多分来れるかな。この時期暇だしw あ、これアドレス。」
と達也さんも来れるらしい。こちらは落ち着いたサラリーマン風の人。
で、確か新婚さんで、嫁さんと一緒にライブ行ったとか惚気てたw
「了解! 次回はここのオフの歌姫も参加する予定だから楽しみにね」
「歌姫?」
「そ。コピーバンドでボーカルやってる人なんだけど香織さんの大学の後輩でね、時々オフ会にも参加してるんだ。めちゃ歌うまいよ」
ガボールは男性ボーカルだけど、女性が歌うのもちょっと雰囲気変わるだろうし興味あるな。
ちなみに幹事兼マスターが女性ということもあり女性の参加者も比較的多いらしいけど、今日の参加者の人は歌わないで、他の人の歌を聴いたり香織さんと話して盛り上がってたな。
楽しそうだったし話しの内容は気になったけど、ここ数年は会社の事務のお姉さん位しか話してなかったから俺的に初対面の女性はハードル高め。。
コミュ力低いのが恨めしい。。。
その日はほろ酔いでガボールの楽曲を聴きながら帰宅。
久々に何だかよく眠れそうだ~
*************
「お、1位獲得!!」
オフ会の翌週。
都内某カラオケ店にて前回のオフで知り合った司さんとガチでカラオケ。
何だかオフに参加して以来カラオケに嵌ってしまい、仕事帰りに時間があると一人でもカラオケに行くようになってしまった。いわゆるヒトカラで、そんなことを連絡先交換した司さんとやり取りしているうちに同年代で音楽の趣味も結構被っていたことがわかり、一緒にカラオケ行かない?となったのが昨日の夕方。
ということで、金曜日の仕事終わり、軽くお酒を飲みながら今二人でひたすら「ガボール」の楽曲を歌いカラオケの全国採点機能を楽しんでいるところ
「他に歌ってる人居ないしね~」
と司さん。
はい。マニアックな曲なので他に歌ってる人が居ないので自動的に1位です。。
「それは言わない約束でしょw」
といいつつ同じくマニアックなアルバム曲を入れる司さん。
今日は月初という事で全国採点順位が一旦リセットされる日。
歌が上手い気分に浸る為、1位獲得のイベントをしているわけです。
「あぁーー 2位だ。歌ってる人居るよこれ マニアックな・・・」
「うちらと同じような人居るんだね。1位は美樹さん?この曲女の人も歌うんだ」
「んっ。美樹さん? あ、この人多分知ってるわ」
と司君。コミュ力強い人は、やはり女性の知り合いも多いんだな。。。
「この間のオフ会で話した歌姫だよ。
というかうちらと違って月初じゃなくても1位いける点数だよこれ。。。」
「すごいね。でもガボールの曲を女性が歌ってるのも何だか不思議な感じだけ
ど、歌上手な人ならきっとカッコいいんだろね」
「そだね。俺もあんまり話したことはないけどクール系の美人さんだよ。
あ、そういえば確かSNSにライブの告知出てたけど今度行ってみる?」
「本家が活動休止してるし、ちょっと面白そうだね」
「じゃ、日時とか確認して後で連絡するよ。
都合合えばチケット予約しておくから行こうぜ!」
というような雑談してるとちょうど予定の2時間が経過
「じゃ、また来週!」
仕事帰りでお疲れモードでもあったので、延長はせずその日は解散。
繁華街を抜け、ターミナル駅へ向かう。
途中、飲んだだけで食事をしてなかったことを思い出し、目についたファーストフード店へ。
建物2Fのカウンター席に座りコーヒー片手にハンバーガーを食す。
「うまぁ~」
普段は自炊かコンビニ飯だけど、時々こういうジャンクなのも食べたくなるんだよね。と自分の世界に浸っていると、空調の風にのって香水のいい香り
香りの方を見ると、綺麗な黒髪の女性が、コーヒー飲みながらMacBookでお仕事中。何故だろう。カフェとかで仕事してる人のパソコンはMac率が高い気がする。。。
等とどうでもいいことを考えながら眺めていたら
『あ、目が合った・・・』
慌てて目線を外し残りのコーヒーを飲む。
気のせいかもしれないけど、何だかこっちをチラチラ見てる気がする。。。
「ガタッ」
30分後、先程の黒髪の女性が席を立ち店を出ていく。
食べるもの食べたし、まだ終電まで時間あるけど俺もそろそろ帰るかなと思い、ふと黒髪の女性が座っていた席を見るとテーブルにスマホらしきものが。
「忘れ物? まだ店内にいるかな?」
とりあえず荷物をまとめ急ぎ1Fに降りて探すと、店の出口のところに黒髪の女性を発見!
店外に出て人ごみに紛れてしまうと探すのは難しくなるので、あわてて出口まで行き
「あ、すみません。携帯忘れてますよ」
と声を掛ける
「え?」
と振り向いた女性。
『やばいめちゃ可愛い♡』
腰まである長い黒髪に愛嬌があり人懐っこそうな感じの顔にメガネが似合ってる。年齢は20代前半かな?
いわゆるアニメの美少女キャラ的な感じで好みどストライク!
ただ、ここで気のきいたセリフを言えるほど女性への免疫もないので、とりあえずはナンパと思われないようスマホを女性の前に出し
「忘れ物ですよね?」
とにこやかに声を掛ける
「あ、あ、ありがとうございます」
何故か顔を真っ赤にし、俺の手からスマホを奪い取り走って出て行ってしまった。
「んっ?」
俺なんか不審者的な振る舞いしたか?
女はわからんと疑問をもちつつ帰路についた金曜の夜。
そして、これが彼女との最初の出会いでした。
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