第203話 お寺前、等間隔の法則

 とある休日のこと。

 私は、たまたまこちらに出かけてきているというありさちゃんをつかまえて街を歩いていた。

 そこで奇妙な光景を目にする。


「何だこれは…」


 鴨川の恋人等間隔の法則がなぜこんなところに…。

 ここはお寺の前なんだけどなぁ。


「私たちも混ざろうか」

「なんでですか…」


 私がさり気なく肩を抱くと、ありさちゃんにさっと振り払われた。

 照れちゃってね。


「なにかのイベントかなぁ」

「ただの偶然じゃないですか」


 そう見えるだけってこと?

 まあそういうこともあるかぁ。

 それはそうとして、こんなものを見せられて黙っているわけにはいかないなぁ。


「あ、いたたた……。急に足が~(棒)」

「大丈夫ですか?」


「ちょっと休んでいい?」

「いいですけど」


 お言葉に甘えて、ちょっとした段になっているところに腰を下ろす。

 もちろん足が痛いなどと言うのは嘘だ。


 まわりとの感覚を調整し、私たちも等間隔に見えるような位置に落ち着く。

 私の不審な動きにありさちゃんが不思議そうな顔をしていたけど、すぐに気付いたようだ。


「はっ、これが狙いでしたね?」

「気付いたか」


「こんなことしなくても、言ってくれたらいいのに」

「さっきダメって言ったじゃん」


「ダメとは言ってませんよ?」

「じゃあいいの?」


「まあ、どうしてもと言うのなら付き合いますよ」

「よし、行こうか」


「どこへ!?」

「デート」


「しません」

「え~? 今付き合ってくれるって言ったじゃん」


「座ることかと思いましたよ」

「デートはダメなの?」


「ダメです。お出かけくらいならいいですけどね」


 それはデートではないのだろうか。

 最近はそういうのをデートと呼ぶのだよ、ありさちゃん。

 まあいい。


 私はそれでも満足できる。

 というか、私は今デート中のつもりだったよ。


「じゃあちょっと休んだらお出かけ再開ということで」

「わかりました」


 そう言ってありさんちゃんがとなりに座る。

 等間隔が気になるのか、逆に私の方に近づいてくれている。

 そんなありさちゃんを微笑ましく眺めていると、ふとあることを思った。


「前からわかってたけど、ありさちゃんっていい体してるよね」

「な、何ですか?」


「いや~、この腰まわりとか、お尻の辺りとか」

「ひゃ~!! 何触ってるんですか!」


「だって触りたくなったんだもん」

「触りたくなっても触らないでください! 通報しますよ!」


「きゃ~! いい声してるね~!」

「もうダメだ……。何をしても喜ばせてしまう……」


「無駄な抵抗はやめて、私にすべてを委ねなさい」

「怖すぎてできませんよ!」


「大丈夫だよ。ちょっと裸で一緒に寝るだけだから」

「大丈夫じゃない!?」


 本当に一緒に寝るだけなんだけどなぁ。

 大丈夫だよねぇ?


「仕方ない、そろそろ行こうか」

「あれ? 足は大丈夫なんですか?」


「あ、うん。あれは嘘だから」

「やっぱりですか……」


 まあ気付くよね~。


「クレープでも食べに行く?」

「食べます!」


「じゃあ行こっか」

「はいっ!」


 チョロイ!

 きっとありさちゃんはクレープを食べて頬にクリームをつけてくれることだろう。


 私はその隙を見逃さずにクリームを舐めとって見せようじゃないか。

 ぐふふ、楽しみだな~。


「げへへへへ」

「……行くのやめようかな」

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