第121話 かおりちゃん、白河家へ
今日は大切で特別な日。
そう、かおりちゃんが家に来ているのだ。
「さあ、入って入って」
「お邪魔しま~す」
私は玄関でかおりちゃんを迎え入れた。
そして今日はもう一人お客さんがいる。
「私まですみません」
「いえいえ、お母さんともゆっくりお話ししたかったですし」
そう、なんとかおりちゃんのお母さんであるさくらさんまで一緒に来ているのだ。
別に何かあるわけじゃないけど、将来のことを考えておくと、今から仲良くなっておくのは良いこと。
それにしてもやっぱり私のお母さんに雰囲気が似ている。
なので私も大人相手なのになんだかまったく緊張しない。
いずれはお義母さんになるかもしれない人だし、これは嬉しいことだ。
それを抜きにしても、こんなやさしそうな人とは仲良くなりたい。
私はさくらさんと一緒にリビングへむかう。
すると先に中へ入ったかおりちゃんがお母さんとご対面していた。
「あなたがかおりちゃんね。なずなちゃんから聞いていた通りやっぱりかわいいわね~」
「わ~」
かおりちゃんは私の目の前で、お母さんの胸の谷間に吸い込まれていった。
お母さんも、将来かおりちゃんのお義母さんになるかもなんだし、今のうちに懐いておいてほしい。
うんうん。
それよりも、これは私もさくらさんの胸に吸い込まれる展開にはならないのだろうか。
ちらっとさくらさんの方を見てみると、それはもうやさしいお母さんな目でかおりちゃんを見つめながら微笑んでいた。
あまりにもやさしい表情過ぎて、一瞬女神様かと思ったよ。
しかし残念なことに私がその胸にダイブすることは叶いそうにない。
突然やったらお縄についてしまうだろう。
そんな時リビングのドアが開き、私の愛する妹、柑奈ちゃんが入ってくる。
「あ、にぎやかだと思ったらもう来てたんだ」
「うん、ごめんね、うるさかった?」
「大丈夫だよ、普段の私たちの方がうるさいから。気にしないで」
そう言って、何か飲むのか台所の方へむかおうとする柑奈ちゃん。
その姿をさくらさんが目で追っていて、そして声をかけた。
「あなたが噂の柑奈ちゃんね」
「え、噂……? まあ、はい、そうですけど……」
「うふふ、なずなちゃんから聞いてた通りかわいいわね」
「わわっ」
なんと、私が諦めていたさくらさんの胸ダイブを柑奈ちゃんは叶えてしまった。
え~、私もして欲しいよ~。
「う~ん、なんだか人見知りしている時のかおりちゃんみたいでかわいい」
「うぶぶ……」
く~、柑奈ちゃん、羨ましいぞ。
私はいったい誰の胸に飛び込めばいいのだ。
そんな時だ、インターホンがなり、私は玄関にむかった。
もしかしてこの人の胸に飛び込めと言う女神様のお告げかもしれない。
「って、ありさちゃん!?」
「こんにちは~」
「ありがとうございま~す」
「きゃ~!! 何してるんですか!! 通報しますよ!」
私はこれが運命だと信じてありさちゃんの胸に飛び込んだ。
金髪中学生の温かな体とやさしい香りを堪能していると、なにやら妙な視線を感じチラッと様子を見る。
するとそこにはなんとめぐりさんの姿があった。
少々背中が冷たくなるのを感じたが、私はもう開き直ってしまうことにする。
「めっぐりさ~ん!!」
「ひゃっ」
私は誤魔化すように今度はめぐりさんの胸に飛び込んだ。
うむ、これで今のは白河家流のあいさつであると認識できるだろう。
「ちょっとお姉さん、めぐ姉ちゃんに何するんですか! 通報しますよ!」
「まあまあ、これはあいさつだから。ちょっとだけ許して」
「こんなあいさつがあるわけないでしょう!」
仕方ない、そろそろ撤退するか。
「なずなちゃん、こんなことしてると本当に捕まっちゃうよ?」
「大丈夫ですよ。その時はめぐりさんが助けてくれるでしょ?」
「もう、私をなんだと思ってるの……」
まるで呆れたような言葉とは違い、ちょっと嬉しそうな表情をみせるめぐりさんだった。
さて、玄関で騒ぐのはこれくらいにして、少し正気に戻ろうか。
まず初めに大事なことがある。
それは、実のところこのふたりには、まだ私たちの家の場所を教えてはいないのだ。
さらに言うと、今日ふたりと会う約束などはしていない。
つまりこの方たちは普通に考えてここにいるはずはないのである。
「あのめぐりさん。どうしてこの家がわかったんですか?」
とりあえず、考えてもわからないので直接本人に聞いてみる。
どこかで誰かとつながっているのだろうか。
例えば珊瑚ちゃんとか。
しかし答えはまったく別のものだった。
「ふふふ……、実はね、この前このあたりをパトロールしていたら、たまたま見送られるなずなちゃんを見つけたの」
「な……んだと」
「ああ、ここがなずなちゃんの家なんだぁって思って、ばっちり記録しておいたわ」
「ひぃ~、おまわりさ~ん」
「は~い」
「って、この人おまわりさんだった~!!」
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