I 山の神さま
ボク
ボクは誕生日がわからないんだ。
病院で泣き声を上げていた時は確かに生まれたばかりの赤ちゃんだったけど、正確にいつ生まれたかはわからないんだって。
理事長せんせいはボクにこう言ってくれたよ。
「あなたは天からの授かりものよ」
天、ってお空のことなのかな。
どうしてボクにはお父さんとお母さんがいないの、って3歳になったばっかりの時に聞いたらそう教えてくれたの。
あ。一応病院で発見された時がボクの誕生日、ってことにしてあるんだって。
お正月の、元旦だよ。
病院のポストでフルーツバスケットみたいなカゴに入って泣いてたんだって。ずいぶん大きなポストだって思うし、カゴの中のフルーツはお父さんとお母さんが食べちゃったのかな。
お父さんとお母さん、年賀状と間違えてボクを出しちゃったのかな。
「みんなわたしの宝物ですわ」
教室へ回って来た時はみんなにそう言ってくれる。
けどボクは知ってるんだ。
「あなたが一番大切ですわよ」
ボクにこっそりこう言ってくれた時、ピーン、ときたよ。
目の前にボクがいる時はボクが一番大切。
試しにミコちゃんに聞いてみたよ。
「ねえ、ミコちゃん。園長せんせいって、えこひいきしないよね」
「さあね。まあ、好き嫌いはあるんじゃないの?人間だから」
やっぱり。
ミコちゃんも「あなたが一番大切」って言われたんだ。
でもさ、ボクのいる年長さんの『トキャケ組』だけでも15人いるからさ。一番、って『と〜っても!』っていう意味だよね。15人もと〜っても好きでいるのって大変だよね。
だから、園長せんせいのこと、ボクも好きだよ。
ううん、ミコちゃんも好きだし、みんな好きだな。
よく考えたらボクもみんなのことが一番好きだな。
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