〇〇を文明の灯で瞬殺する程度のブレイクスルー

柏崎海

プロローグ

第1話 とある世界の創世神話

 全ては大いなる神が与えて下さった。

 大地の恵みも、森の恵みも、海も空も、全て大いなる神の慈悲によって人に与えられた物だった。


 人がより多くの糧を得ようとすれば狩猟の道具を教え、より多くの恵みを得ようとすれば作物の育て方を教え、より豊かに暮らそうとすれば生活の知恵を神は人々に伝え、人々は大いなる神の愛により遍く幸福な生を授かっていた。


 世界は神の作りたもうた楽園だった。

 この世に争いはなく、全ての人は神の元に平等で、人はただ幸せになるために生まれ生きる。幾つもの世代を重ねた人々の文明は、夜空の星々まで辿り付いた。


 そして終わりが訪れる。

 人の営みを支えるために生み出された六柱の天使達の反乱によって。

 動物は魔物となって人々を襲い、天使は邪悪に染まり世には眷属たる悪魔が放たれた。


 終末期の始まりである。


 人々は抗う術を持ち合わせてはいなかった。これまで神の庇護で暮らしてきた人々には争うための力がなかったのである。

 それは大いなる神が、魔法という力を与えたもうても変わらなかった。争うための心がなかったからだ。


 人はとても儚く脆弱で、守られなければ生きては行けぬ箱庭で暮らしていたのだった。


 生存戦争は人の敗北に終わり、人類は絶滅の瀬戸際に追い込まれ、世界は闇に閉ざされた。


 それ以降の記録は残っていない。


 神は間違えたのだ。


――統一教会封印庫・棄教聖書より

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