終わりのないドラマ

カラスヤマ

ゾンビになった大好きな彼女①

愛を忘れた国王が、支配する世界。

人と同じ数だけ魔物がいる世界。

若い勇者はいないが、老けた魔王はいる世界。



これは、

やがて世界最高の錬金術師になる青年と国王の娘(家出中)との甘く切ない物語です。《嘘》




ーーーーーーーーーーーーーー



好きになってしまった。ゾンビになった彼女を。



「ねぇ、私のこと好き?」



「嫌いだったら、一緒にいないよ」



だから僕は、彼女を助ける為に旅に出る。旅の目的は、一つ。魔女を見つけ、彼女のゾンビ化を治癒してもらう。



腐った足を引きずりながら、壁に手をつきながら、それでもゆっくりと彼女は僕に近付いた。



「ねぇ、サトル。お願いだからさ。なんでもするから、私。……だからさ、私を見捨てないで。お願い」



泣いたから、左の目玉が床に落ちた。


僕は、そっと目玉を拾うと彼女の目があった場所。黒い窪みに目玉を押し込んだ。



「僕は、ナツを見捨てない。だから、心配しなくて良いよ」



「どうして……。お前って。そんなに優しいんだよ。嫌だろ? 嫌に決まってるじゃん。こんな腐った彼女さ。臭いし、虫だらけだし」



「…………」



僕は、彼女を抱き締めた。無数のウジ虫が、僕の体に無断で乗ってきた。



「ナツ……。僕さ、錬金術でナツの新しい体を作るのに成功したんだ。今、持ってくるね」




僕は、新しい『器』を彼女に渡した。



「どう? この体にナツの記憶だけインプットすれば、一緒に旅が出来るよ。このどろどろに腐った体だと何かと道中不便だしね」


「お前………天才すぎるっしょ、これ。そんな才能あるんなら、王様の側近にもなれたのに」


「興味ないよ、そんなもの」


呆れながらも笑ってくれた。



はぁ~……良かった。


新しい体になったナツ。いよいよ、旅に出発だ!



「じゃあ、そろそろ行こうか。魔女を探しに」


「いやいやいやいや、その前に私をゾンビ化したあのクソ忌まわしいアンデッドを退治するから。それが、先。何より」


「へ?」


「だ~か~ら~。まずアンデッド探しに行くよ。ほら、早くっ!!」



彼女に左手を掴まれ、半ば引きずられる様な形で僕とナツの長い長ーーーーーーーい旅が始まった。

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