綺麗な服を着てたら地べたにも座れやしない
何かを頑張ってみたり、困ってそうな人に声をかけてみたり。そういうことをするたびに、自分が自分に問うてくる。お前がやってること全部、周りからよく見られようとしているだけなんじゃないのか。お前の心なんてもうどこにもないんじゃないのか。
もう何百何千と繰り返されたこの自問自答に、一度だって答えられたことなどないのに。これから答えられるようになる日が来るイメージも、少しだって見えやしないのに。
秋は毎年体調が崩れる。僕が鬱状態だとはじめて診断されたのも秋だった。
こんなにつらいのは気温とかホルモンとかそういうどうにもならないやつで、僕のせいじゃないんだ。病院の先生が教えてくれたそんな情報が頭の中に入っていたって、別にこのつらさが嘘になるわけじゃない。
いつもなら眠ってさえいれば逃げられるたくさんの苦しみたち。でもこの季節は眠っていても悪夢ばかりで長く寝ていられない。眠っては、うなされ、起きる。そんな繰り返しを、数えるのも面倒なほど繰り返しているとようやく朝が来る。寝る前より疲れてしまうので何のために寝るのかも分からないけれど、少しも寝ないでいられるわけはなく。
時々夢想する。寝なくても食べなくても死なない体で、どんな暴力にも傷つけられず、暑さにも寒さにも少しも脅かされない身体があればいいのにと。そうしたら何も怖がることなく旅に出られるのに。手ぶらでどこまでも。死ぬまで毎日、新しいものを見つづけられるのに。
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