運命が自動ドアを通ってやってきた
洗濯機の後ろに落ちてしまった歯磨き粉を救出しようと隙間を覗き込んでいたら、何やらDVDらしきものが挟まっていた。
何ヶ月も前にTSUTAYAで借りたDVDだった。
ここまで読んだみなさんはきっと心臓がキュッとなったであろう。だが心配ない。僕はTSUTAYAプレミアム会員だ。延滞金という概念は僕には存在しない。
TSUTAYAプレミアム会員は旧作を一度に5枚まで、月当たり無制限で借り放題。返却期限は存在しないため、延滞金とは無縁なのである。TSUTAYAプレミアムは月額1000円。これは入るべきだと一人暮らしを始めてすぐに入会した。しかしこれが罠で、返却期限がないと借りたDVDをいつまでたっても見られない。期限があればそれまでに見るものも、いざ急いで見なくていいとなると、つい後回しにしてしまう。せっかく毎月1000円も払っているのに、この4ヶ月で5枚しか借りていないという有様だった。(しかも2枚しか見ていない)
ずっと心の中では「もったいないなぁ…」と思いつっけていたものの、きっと来月はたくさん借りるぞ、と色の薄い楽観主義で自分を騙し続けてきた。そのことに負い目を感じていた。だが今日、その暗澹たる気持ちは台風一過のように消え失せた。
なぜなら、もし今回洗濯機の隙間に入っていたせいで返し忘れていたDVDが借り放題のものじゃなかったとしよう。おそらく延滞金は軽く万を超える。それに対して、その間に僕が払っていたお金といえば、4000円程度。明らかに得である。
「そもそも隙間になんて落とさなきゃいいだろ」との声が聞こえてきそうだが、僕の性格的に、今回と同様の事故はいずれ必ず起きる運命にあった。僕は自分のガサツさを見越した先行投資をし、見事にその賭けに勝ったのだ。
そして今僕は、同時に救出した歯磨き粉を使って歯を磨きながら、キシリトール味の勝利を噛み締めている。
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