あいつの死体


海岸に誰かの死体が上がった

おれは思った

あいつだと

あいつの死体がついに発見されたのだと

続報を待つまでもなかった

あいつ以外、有り得ないと直感で悟った

おれは錆び付いた自転車で駆けつけた

「………はあはあ」

タンクトップの裾を初夏の風にはためかせながら海岸へと向かったのだ

やっぱりあいつだった

おれは死体を見下ろした

「わんっ」

連れて来た犬が同意を示すかのよう吠えた

あいつはパンチパーマだったのでうつ伏せの状態でもすぐにわかった

おれはあいつとの思い出に浸った

(稲妻に吠える粋な奴だった)

だがそれ以外はあいつが死んだという衝撃で今は思い出せない

葬儀は大いに盛り上がった

カウボーイハットを被って腰からビラビラを垂れ下げた奴らが続々と集結して来た

チキンが今日は食い放題だった

葬式会場に到着する大量のピザだった

「ピンポーン!」

きた

と思ったら宗教勧誘のおじさん

強姦した

宗教勧誘のおじさんなんてやりたくなかったがあいつの葬儀を盛り上げるためだから仕方ない

おれはその日、生まれて初めて強姦ってやつをしてみた

全然、良いものではなかった

(これは駄目だな………)

何が悲しくて嫌がるおじさんに無理矢理、陰茎を突っ込まなくてはならないのか

しかも相手は世界平和を願っているようなそんな優しげなおじさんだというのに

隣りの友人に話し掛けた

「強姦なんてろんなもんじゃないな」

「ああ、実際にやってみなくちゃわからないことって本当にあるんだな」

おれたちは陰鬱に腰を振り続けた

これが発電にでも活かされればまだやり甲斐もあったのだろうが………

おれは今はまだ独身だがいつかは結婚もするだろう

将来、嫁や子供が出来た時にはこの時のことは隠蔽しておこうと強く思った


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