ともだち


ともだちと

殺し合った

ともだちは

おれの攻撃に激しく抵抗した

ともだちなんだからおれのために死んでくれ

そう思った

だがともだちは言った

「お前こそおれのともだちなんだからもっと簡単に殺されてくれ」

議論は平行線を辿る

ともだち………

おれは言った

こんな残酷な世界でお前ひとりを残して死ねないんだよ

だからお前を殺すんだ

おれが死ぬのはさ、ともだちが死んだそのあとなんだ

だがともだちも反論した

「おれだってそうなんだよ、お前にともだちを失う悲しみを味あわせたくないんだよ」

なんて奴だ

おれは分からず屋のともだちを冷凍マグロでぶん殴った

「ぎゃー」

ともだちが叫んだ

おれは冷凍マグロでさらにぶん殴った

このともだちはそろそろ死ぬ

そんな予感がしていた

まだ生きていた

死んだかな? と思うと生きていて肺呼吸を始めるから油断がならない

「死んだのか?」

「………はい、死にました」

おれは下らない冗談が大っ嫌いなんだよ

馬乗りになってさらなる追加攻撃を与えた

「ぎゃー」

それはさっきも聞いた

ともだちよ

そろそろ向こう側へ旅立つ季節だと思わないか?


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