夢と現実


誰もいない遊園地で

そこにはおれもいない筈だけど

けれどそこにはおれもいて

青空の下

寿司ロボットが寿司を作成してくれた

「ありがとう」

おれは寿司ロボットにお礼を言って

そして靴底で思いっきり叩き潰した

何故なら衛生的に問題があるから

寿司ロボットは関節が所々、錆びていた

それはやばい寿司

多分、これは夢の中だから食べても良かったのだが

夢の中でもお腹が痛くなるのは嫌だった

寿司ロボットはおれに構わずどんどん寿司を作成していった

全自動寿司作成装置

そこから逃れる術をこいつは持たない

「お腹がいっぱいですから、どうかあなたが召し上がってください」

おれは提案した

「ヤダ」

そいつは言った

さらにこう続けた

「コンナ汚ナイ物ガ食エルカ、見テミロ、病原箘デイッパイノオレノ掌ヲ」

何故か怒っていた

さすがに夢の中でもこれには頭にきた

(………やっちまうか)

控えめにもそう思えた

幸い手には金属バットが握り締められていた

いちいち確認しなくたってわかる

(おやおや)

夢の中で殺しをした場合どうなるのだろうか?

夢の中で死刑になるのか?

目覚めればそこで試合終了

新しい世界で何食わぬ顔して生活をすればいい

そう判断したおれは気付けば破壊された寿司ロボットを見下ろしていた

「ふあんっふあんっ」

夢の中で

夢の中の桃色のパトカーがやって来た

中からクマさんやらパンダさんの警官が出て来た

「おめでとーございまあーす」

なんだなんだ?

「あなたはこの誰もいない筈の遊園地で寿司ロボットを撲殺した十七万五千六百二十二人目の加害者です」

クマさんが辺りをうろうろし始めた

それは凄く挙動不審だった

おれは気になって仕方がないのでおめでとうメッセージも無視して警官のクマさんに話し掛けた

「何をしているんですか?」

クマさんは、というかクマさんの着ぐるみを着た中の人間は喋り出した

「ちょっ………自転車の鍵、落とした」

そういうことは後でやってほしい

そうしておれは目が覚めたいつものおれの部屋で

「おはよう」

この女だれだ?


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