悪夢、再び
悪夢から
目覚めた
わたしはいつもの部屋にいた
ここにはもう
悪夢の断片さえ見当たらない
わたしは安心して再び眠りに就いた
甘かった
悪夢はわたしがこちらへやって来るのをじっと待っていた
わたしはおじいちゃんといっしょに花を摘んでいた
こちらを振り向いたおじいちゃんの眼球が無かった
真っ暗な穴がただこちらをじっと向いていた
(これは夢だ………)
わたしは思った
そうだというのに
わたしは一体、何を怖れているのだろう?
一歩も動けずに
真っ暗な空洞を向けるおじいちゃんから目を逸らすことが出来なかった
夢は夢ではなくまだ現実そのものだったのだ
おじいちゃんは夏、間違って前進してしまったようだった
口元だけで笑うと言った
「神様に初恋しました、その際ふくらはぎがうまいです」
まさに遅刻寸前といった様相で勢い良くキュウリを齧り始めた
「ジューシーが五分と五分」
そしてわたしの犬を撲殺しながらおじいちゃんが問い掛けてきた
「質問はありませんか?」
何も言わずにぼろ雑巾のようになってしまった愛犬を見てわたしが黙っていると
「え? 趣味?」
全自動的に話しを展開していった
おじいちゃんは時の支配者になるようだった
並大抵の坂道なら微動だにせず駆け上がれそうな気がした
予感が覆い尽くしていた
真新しい崖からおじいちゃんは言った
「こっちへ、おいでよ」
そこは上なの? 下なの?
わたしは迷いながらもそちらへと歩を進めている自分を不思議そうに何処か遠くから眺めているような気分だった
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