キモオタニート
「下等さあん、お届けものですよ!」
キモオタニートのおれのところへ宅急便がその日の午後やって来た
ガサゴソッ
配達の若い男はなんと玄関へやって来たおれの目の前で荷物を開封し始めたのだ
(………何なのだろう)
まるで別の人類でも眺めるかのようにおれはそいつの仕草に見惚れていた
個人情報が法律によって保護されているこのご時世によくもまあこんな男が宅配業に勤しむことが出来るものだとある意味、感心した
そいつはまるで目の前のおれが見えていないかのように独り言を喋り始めた
「さあてと………このキモオタニートのところへは一体、何が送られて来たのかな?」
おれは断固抗議した心の中で
キモオタニートって言っていいのはおれだけなんだよ!
だがこんな溌剌そうな若者には何も言えない
「おおっ」
男は言った
「うまそうなチョコレートクッキーじゃんか!」
はてな?
おれは首を傾げた
(………このおれにクッキーを送ってくるような人脈があったかな?)
疑問に思ったがもうそいつは当然のようにばくばくと食べ始めていた
「うぐぐっ」
痙攣したのちうつ伏せで倒れ死んだふりを開始した
やがて完全に停止した
ひとんちの玄関でどうやら本当に死んだようだった
クッキーに毒でも入っていたのだろうか
やって来た警部補の一人がおれに話し掛けた
「キモオタニートで良かったな」
「はい、キモオタニートで良かったです」
おれは脳停止しながら答えた
この世界の何処かにおれをクッキーで毒殺しようとしている奴がいる
一体、何が良いのか
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