第92話 母が見た蛇の夢
地獄の新婚生活から始まって、監護権の裁判、間接強制の話が終わり、次は誘拐の刑事告訴、人身保護請求へと移っていきます。
時間の経つのは早いもので、記憶は少しずつ失われていきます。備忘録として、当時のことを記録しておこうと思いつつ、書かないうちに忘れていたりします。
年月をさかのぼって、結婚が平成二十一年六月、初めて彼女を両親に紹介したのは、前の年の平成二十年の秋でした。
母親の彼女に対する印象は、「かわいらしい人」だったようですが、蛇が大嫌いな母は後日、彼女が巳年と聞いて、ゾッとしたそうです。
それから、四年の歳月が流れ、平成二十四年、娘が連れ去られた年のこと。
四月、アンパンマンチーズを食べさせていたところへ、いきなりキレてリビングに入ってきた妻が、「何食べているの」と言って、娘の頬をわしづかみしました。
結局、それを反省することもなく、「何食べさせていいか、分からんわ!」と悪態をつき、二歳の娘の前に、皿に山盛りのミニトマトと茶碗山盛りの御飯だけを出した妻の元から、実家へ娘と避難しました。もちろん、突然、黙って連れ去りを決行したわけではありません。「あなたのやっていることは、ひどすぎる」ときちんと伝え、実家へ帰ると言ってから帰りました。
娘と実家へ帰った時、母の夢に一匹の蛇が現れて、恐怖で飛び起きたそうです。そのぐらい、蛇が苦手な母です。母曰く、「酉年だから、蛇は鳥を食べるから、恐い」のだそうです。この時の蛇の姿や色、現れたのは布団の上か枕元か、などの詳細な話は、母も私も忘れてしまいしました。
その後すぐ、妻と義父の作戦にはまり、一度、娘と二人で妻の待つ家に戻ったあと、母はまた蛇の夢を見ました。今度は蛇が小さな蛇を連れており、嬉しいのか母蛇はピンク色に光っていたそうです。
二回目の蛇の夢の話を母から聞かされたのは、連れ去り直後でした。娘を連れ去っていく妻の姿だったのかと感じたそうです。
世の中には、不思議なことがあります。
精神的に壊れた人は、己の悪意のままに従い、他人に迷惑をかけようが、己の行動で誰かが苦しもうが、まったく気にせず、我がまま勝手に振る舞います。
時にはサイコパスと呼ばれ、もし診察を受ければ、境界性人格障害と診断されるかもしれません。自分の勝手な思惑と都合のままに、周りを振り回して、思いが叶ったことを喜んでいる人たちです。
でも、この世の中は、きっと目の前で見えていることがすべてではないと感じます。「嘘をついても、裁判所が認めれば、法律の正義です」とコヤブ弁護士は言いました。嘘は、法律の正義であっても、この世の正義ではありません。平然と嘘をついて、誰かを欺き、裏切って生きていく人間がいます。しかし、その異常な人間たちが、たとえ法律で許されても、すべて許されている訳ではないでしょう。
きっと善因善果悪因悪果が真実で、どんな行いも、結果はすべて本人が受けるものだと思います。
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