第50話 自分勝手な記憶

 十一月二十二日 十九時一分 妻への返信

 こんばんは。

 返事が遅くなりました。

 この前のようなことがあると心配なので、部屋には行けません。

 夏にも伝えましたが、実家に会いにきてもらえませんか。以前も伝えましたが、もちろん親は同席しません。

 お盆に、友子さんが家に戻りたいと、両親に謝りに来た時の言葉を信じて、「週末は実家にいるから会いに来てほしい」と伝えたのです。

 夏に実家の部屋で三人で過ごした時、これからこんな感じで少しずつでも家庭を修復できたらと期待しました。

 メイちゃんを不安定にさせない状況で、安心して会えるようにしたいのです。

よろしくお願いします。


 十一月二十二日 十九時二十三分 妻からのメール

 カウンセラーと相談してから、よく考えて返事させてもらうことにします。


 十一月二十三日 九時二十七分 妻からのメール

 ついこの前の話でも、崇司さんが私に言いましたよね、部屋借りるって言ってたのはどうなったんだと。


 夏に部屋借りて親と別にいるなら、そこで会わせると言いましたよ。

 崇司さんが言いましたよね。忘れないでください。

 また連絡をさせていただきます。


 十一月二十四日 十一時十八分 妻への返信

 違います。

 九月に私に会いに来た後で友子さんが電話をかけてきて、「実家を出て一人暮らしをしようと部屋を探している。実家を出たら、私を信用してもらえるか」と言ったのです。

「部屋で一日、メイちゃんと遊びたい」と言ったことに対して、私が何も答えなかったら、友子さんは自分で「その時にならないとわからないよね」と言っていました。

 その時点で部屋で遊ばせるとは一言も言ってないし、実家を出たら信用できるとも言ってません。

 信用ということについてはお盆に友子さんが自分から謝罪したいと言ったのに、それがすべて嘘だったと言うのであれば、信用の前提そのものが壊れています。

 お盆には「父が帰ってこいと言ったから仕方なく帰っただけで、私は本当は帰りたくなかった。警察を呼んだのは父親で、民事不介入なのに、なぜ警察を呼んだのか私にはわからない」と友子さんが言ったのに、先日は「最初から弁護士に相談して警察を呼んだ」と話が変わっていました。

 それでは、五月の連休に友子さんが父親とともに謝ったことさえも、一時的に家に戻るためだけに、親子で意図的に計画的に嘘をついたことになります。

 お盆には友子さんは「お義父さん義母さんにもっと感謝すべきだった」と言っていたのに、先日は「嫁いびりや!」と非難していました。

 謝罪の気持ちまで嘘だったのなら、一人暮らしをしたから信用できるとは言えないし、その部屋で安心して遊ばせられるとは思えません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る