第4話 結婚前の約束

 四月からの習い事で知り合い、六月に彼女から「誰かいい人がいたら紹介してもらえませんか」から言われ、気楽に「いいですよ」と答えたが、実際に紹介にいたる前に、今度は「一緒に食事に行きませんか」と彼女から誘われたのが、交際のきっかけだった。食事の際に、最近おもしろかった映画の話をしたら、「一緒に見に行きたい」と言われて、次には二人で映画を見ることになった。女性のサイボーグの話で、強くて暴力的だが、いつしか人間らしい心が宿っていくという内容だった。

 その後、ドライブで水族館に行き、七月には交際が始まった。


 十月に、両親に彼女を紹介したいと思い、週末、家に来てほしいと伝えると、「そんな迎え方か」と怒り出した。気に入らないことの内容は話さず、ただ叱責を続けるのだが、推察すると、彼女の家に迎えに行くか、あるいはどこかで待ち合わせをしてから連れて行ってほしかったのかも知れない。

 それでも、結局は精神的に落ち着くと、彼女が車で来ることになった。両親に会うことのプレッシャーが大きくて、不安定になるのだろうと解釈した。

 八月にお化け屋敷に行った時の彼女の怖がり方が尋常じゃなく、気が小さくて、心の許容量が少ないのだろうとも考えた。


 十二月、クリスマスのあと、彼女にプロポーズした。「よろしくお願いします」という返事だった。

 怒られるのを覚悟しながら、いつか会社を辞めて自分で商売がしたいことも伝えた。今、独立の思いがある以上、正直に話しておきたかった。

 彼女は涙を流して怒ったあとで、「父親が厳しくて、今それを話すと、結婚を反対されるから、結婚して一、二年後にしてほしい」と頼まれて、約束した。彼女の父親も自営業で苦労してきたから、反対されるかもしれないという理由だった。


 年明けに、妻は父親に結婚のことを話した。勇気を振り絞って話をして、その夜は眠れなかったと、その翌日に電話で聞いた。

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