第26話平均点な私。
中間テストも終わり、早いもので季節は5月も下旬を迎えている今日この頃。答案用紙が帰ってくる度に生徒は一喜一憂する中、私は日に日に迫る体育祭に胸を踊らせていた。
「佐奈ぁ、あと三週間もしないうちに体育祭だよ。私もうその事で緊張して緊張して、中間テストも全く集中できなかったの。……だから私のテスト結果表を奪おうとするのはやめて?」
「栞里、私とあんたはいつも一緒だったよね? 小学校も中学校も、そして今も……。一緒に成長してきた私たちは、お互いのことを何でも話せる仲だって信じてる。だから、そのテストの結果表を見せなさい! どうせいつもとあんまり変わらないほぼ平均点の真ん中順位なんでしょ、つまんない子ね!」
「わかってるならやめて! って言うか大きな声で言わないで!」
私のことなら何でもお見通しの佐奈が、私の中間テストの結果をほぼピタリと言い当てる。
最終的にテストの結果表を盗られた私に、佐奈は自分の結果表を渡してくるのだが、
「……学年順位27位。相変わらず佐奈は頭よくて良いですね」
「栞里ちゃんが勉強不得意なだけですぅ」
「うぐ……」
佐奈は意外にも頭が良いのだ。普段こそふざけた言動や行動をしているが、学力で勝てない佐奈には言い返す気力も湧かない。
「……次こそは勉強教えてね」
「嫌です」
「教えてね?」
「嫌どす」
「教えてね!」
「断る!」
「なんでそんなに頑な!?」
腕をバッテンにして曲げない意思を表示する佐奈が、フイと視線を泳がす。
「今度からは倉敷くんに教えてもらいな。いやぁ知らなかったなぁ、倉敷くんがあんなに頭よかったなんて」
「学年順位8位だもんね。上位10位以内の人だけ名前が公表されてたのに、私も今まで知らなかった」
「まぁ、倉敷くん目立たない人だしね。8位って言うのもなんとも微妙な順位であんまり印象に残らないし」
「8位ってすごいことなんだよ!?」
佐奈の無駄な毒舌に言い返すが、実際問題最近まで私も倉敷くんが頭良いという事を知らなかったので、あまり強く言えない。テスト勉強期間中に、雑談がてら倉敷くんに数学を教えてもらって初めて知ったくらいだ。
「何だか最近、改めて色々と倉敷くんの事を知った気がする」
「ほう、例えばどんな?」
「えぇとね、あれは中間テストが始まる前くらいだったかな。私が休み時間に席に座ってテスト勉強をしている時の事なんだけどね」
「栞里、あんたそんなに勉強しても平均点なの……」
佐奈がボソッと何か言った気がするけど、今はそれより倉敷くんのことについて話したいので気にしないことにした。
あれはそう、中間テストが始まる前のこと……——。
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〜中間テスト一週間前〜
今回こそ、平均点より上の点数取らなくちゃ。いつも佐奈にバカにされてるから、今度こそ見返してやる!
高校二年になって初めての中間テスト。そろそろ大学受験の事も考慮し、本腰を入れてテストに望まなければならない。いや毎回本腰入れてるんだけどね? 中々結果が追いつかないから、これまで以上に頑張らなきゃ。
授業と授業の合間の時間を活かし、英単語帳をペラペラと捲り意気込んでいると、
「藤之助くん藤之助くん、ちょっと良いかな?」
「ん、水越さん? 俺に用なんて珍しいね。どうしたの?」
隣の席から珍しい組み合わせの声が耳に入る。
あれはクラスメイトの
私は英単語帳をペラペラ捲りながらも、聞き耳を立てていると、
「ちょっとここの数式を応用した問題について教えて欲しいんだけど。藤之助くんならきっと優しく教えてくれるかなって」
「ハハハ、優しいかどうかはわからないけど、その問題なら何とかわかるから教えられるかな」
「わぁ、ありがとう藤之助くん!」
どうやら倉敷くんに勉強を教えてもらっている様だ。倉敷くんが頭良い事を知っているとは、中々情報通ですね美鈴ちゃん。そして分け隔てなく懇切丁寧に教えてあげる倉敷くん優しい! 素敵だなぁ良い人だなぁ倉敷くんは!
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————……。
——……。
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「てな具合にね、倉敷くんってどんな女の子にもすごく紳士的で、まさにジェントルマンという言葉が言い得て妙な感じでね」
「ちょ、ちょっと待って栞里。え、何で急に美鈴が? あんたそのことについて何か違和感とか危機感とか、そういうのないの?」
「……何で?」
倉敷くんが如何に紳士的なメンズかを話しているのに、何故か美鈴ちゃんについてツッコム佐奈。聞いて欲しいところそこじゃないんだけどなぁ。
「何でって、え?」
「え? だって美鈴ちゃんは勉強を教えてもらってただけだよ?」
「……栞里、ま?」
ハァァァ……っと佐奈の大きなため息が私を襲う。
まぁ確かに、勉強教えてもらうのはちょっと羨ましかったけどね!
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