番外編 決意の日の夜
「──ぐあぁ~! 俺はなんであんなこと言っちまったんだぁ~!」
ハーモニーからの手紙を破いた夜。徹夜明けで眠いのだが、俺はどうしても昼間の事を思い出し、寝付けずにいたのだ。
昼間の事とは即ち……つまり、ストーキングキングとの無駄に熱いやり取りだ。
人生最悪の、完璧な黒歴史だ。思い出しただけで悶絶してしまう……。
「お前の陰で、目が覚めたって言ったんだよ……カナ。プークスクス!」
ミコの口から身に覚えある台詞が聞こえ、それが部屋の中に響き渡る。
俺は先程から、昼間あったやり取りの事で、ミコに散々弄り倒されていたのだ。
昼間は、徹夜してテンションがおかしかったんだ! あの時の俺は、俺であって俺じゃない!
しかし、俺の考えとは裏腹に、ミコの責めは止むことがなかった。
「あぁ、ありがとうな? プフッ!……だ、だからお返しは一発だけにしといてやるよ、カナ!」
ベットの上で腹を抱え笑い出すうちの精霊様、何度も捕まえようとしたのだが……。今日の彼女は一味違ったのだ。
「カナデ、動くなカナ! 動いたらこれを皆に見せつけるシ!」
そう言って、昼間の殴り合いを壁に映写するミコ。それを見せられるたびに、俺は恥ずかしさの余り床をのたうち回る。
しかもミコの奴、日頃の仕返しと言わんばかりに映像にアフレコまでして来るのだ。──やめろ~! 頼むから許してくれ!
「カナデ……やめて欲しいカナ?」
「お、お願いします、ミコ様! どうかお許しを!」
そう言いながら俺はミコに頭を下げる。言わば、屈辱に屈辱を重ねている状態だ。
「ん~どうしようカナ? ボクとしては、カナデの誠意を見せて欲しいカナ~?」
「せ、誠意って……」
具体的にどうしろって言うんだよ、脅迫か? 脅迫なのか?
「そうカナ……ずっとずっと先でいいから。ボクのご飯を十倍にしてもらおうカナ」
「い、いくら何でもそんなに食べきれないだろ? お残しは勿体ないぞ?」
「大丈夫ダシ!」
そう言うとミコは俺の肩に乗り、自分の頬を俺の頬に擦り寄せてきた。
何て言うか……少しこそばゆい。
「皆で分けて食べれば、きっと食べられるモン。だからカナデ、ハモハモ事も、シンシの事もお願いしますカナ……」
「ミ、ミコ……」
そうか、こいつはこいつなりに気遣い、俺の事を信用してくれてるんだな?
ミコの期待に応えれるよう、頑張らないとな……。
しかし感動出来たのは、つかの間の間だけであった──。
「──だから、お返しは一回だけにしといやるカナ……プフッ」
「や、やめてくれぇぇ~!」
結局俺は、夜遅くまでミコのオモチャになり、寝不足を翌日の引きずったのであった。
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