2020年2月/2冊 周囲に理解されない我が萌え本ベスト3

第3位 『Newton 別冊』シリーズ

 万有引力の発見者アイザック・ニュートンの名は知られていても、彼の名を冠した雑誌の存在は、まだ薄い。

 以前、本屋でニヤニヤしながら立ち読みしてる様を友人に見つかったことがある。「あ……(ヤバ)」としか口にできずにいる私に向かって彼女は「由貴ちゃんの好きそうな本だねぇ」とだけ云い、去っていった。



 サイエンスオタクの心を、わし掴みにするA4ワイド版フルカラー。

 テーマによっては中折れ4頁もの地図やら図説やらが付いてくる。

 この手の雑誌にも、お楽しみ《禁断の袋綴じ》があればいいのになと思う。


【限界ギリギリ! マリネリス渓谷の崖っぷちに立つ!!】とか

【潜入撮影成功! タイタンに存在するメタンの湖底!!】とか

【本誌独占画像! イオの火山活動、その決定的瞬間!!】とか

【もぎたてスクープ! 光と影が織りなす人面岩7変化!!】とか


 嗚呼……興奮しすぎて、カッターを持つ手が震えそう(莫迦)。

 しかし、高い。購うたびに思うが、高い。欲しい物にはいくらでも出すマニア体質が出版社のカモになっている……気がしないでもない。



第2位 『時代劇解体新書』

《花の女子大生》とはよく謳われるが、私は完全に《枯れた女子大生》だった。 

 時代劇が好きで好きでたまらず、平日は朝から深夜までTV放送を録画しまくり、週末は部屋に引きこもっての鑑賞三昧という、しょっぱい大学生活を送っていた。

 本だけでも尋常でない量があるというのに、それに加えてのVHSビデオである。なんらかの容疑で家宅捜査に入られた場合、警察の嫌疑の眼がまっさきに向けられるのは、間違いない量だった。

 時代小説のガイドブックはいかにもありそうだが、時代劇に限定されたスペシャル本となると、ほとんど見かけない。そんなレアでマニアックな1冊を、どういう経緯で手に入れたのか……謎。


 B5版フルカラー。頁をめくるたびに和服姿の侍ダンディたちが時に爽やかな笑顔を、時に悪を斬り捨てる凛々しい面相を、さらしてくる……素敵。

 だが、あれから20年以上の星霜が過ぎ、私を虜にした多くのオジサマたちが、鬼籍に入られてしまった……合掌。



第1位 『工場萌え』

 最初から最後まで霊長類はおろか鳥一羽、虫一匹とて見当たらない、延々工場ばかりが被写体という、無機質極まりない写真集。

 通販のチラシで見つけ、表紙とタイトルだけで購入という無謀な大冒険の結果、見事「萌ぉぉ~~えぇ~~~!!」の雄たけび連発であった。

 朝靄混じりの煙霧にけぶる早暁の工場。燦々と降りそそぐ陽射を浴びた白昼の工場。妖艶な錆色に一面が染まる黄昏の工場。夜間灯に照らされ精緻な造形美が浮かび上がる深夜の工場――どれをとっても、近未来とノスタルジーとが絶妙に織り交ぜられた奇蹟の空間が映しだされていた。

 鉄道オタクの人の気持ちが、わかった気がした。でも、お互いの腹の中は「一緒にするなよ。あんな見て、なにが楽しいんだ」だったりして。

 予想外に好評だったのか、のちに『工場萌えF』『工場グラフィティ』も刊行されたが立ち読みするもイマイチだった。映画や小説にありがちな「ヒットしたから勢いに乗って続編作ったけど失敗しました」感が否めない。


 以上が私のベスト――あれ……理解されないってことは、ワースト?



  麗しの男爵と愛のルール/サブリナ・ジェフリーズ 2013年11月

  夜色の愛につつまれて/リサ・クレイパス 2014年3月


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~2月の「ちょっと一言云わせて本」~


『麗しの男爵と愛のルール』


 サブリナ・ジェフリーズの《背徳の貴公子シリーズ》全3巻を読破した。1冊目で「このヒーロー最高…」とウットリし、2冊目で「このヒーローもたまらん……」とメロメロになり、3冊目で「マズい、これはマズい」とノックアウト。



 前の2人は、いわゆる強引オレ様系。粗野な態度と言葉使いが一番の魅力になっているのだが、3人目は慇懃紳士系、口調がつねに「ですます」なのだ。

 ヒロインとの情交時も始終「ですます」。この手のヒーローは初めてだったため、コロリと落ちた。うきゃー、すっごい燃え(萌え)るんですけど!!



『夜色の愛につつまれて』


 読みはじめて、ビックリ。こちらも「ですます」ヒーローだった。

 情交時はもちろん、結婚後も、子供が生まれても、崩れない「です・ます・です・ます」。そのくせヒロイン以外には、くだけた科白や、妙に荒っぽい科白を吐くものだから、そのギャップたるや、もう……もう……(撃チーン)。

 これは原作者というより、翻訳者と編集者の功績(もしくは勝利)だろう。尊敬語や謙譲語、丁寧語というのは日本語特有の表現であって原文(英語)にそうした区別があるわけではないのだから。

 もし、このヒーローが慇懃な言葉遣いじゃなかったら、私は、ここまで惚れこみはしなかった。

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