第6話 秘められた力
「モノノ怪っていうのはね」
突拍子もない話に声も出せないウチに、美人さんが説明を続ける。
「人間の繁栄以前から存在し、自然と共にひっそりと生きてきた種族。他の生き物にはない力を持っていたから、一時は神として崇められたりもしていたわ」
「もっとも文明の発達と共に次第に歴史の片隅に追いやられて、今ではこうやって人間のフリをしながら暮らしてるんだけどね」
「ち、ちょっと待って下さい。「こうやって」って……まさか皆さんも!?」
とんでもない考えが頭をよぎって、ウチは思わず声を上げる。するとイケメンがニヤリと笑みを深め、右手で自分の頬に触れた。
「そ。君が
イケメンの右手が、そのまま自分の顔を横切るように動く。すると……そこには目も、鼻も、口もない、のっぺらぼうの顔面があった。
「※☆♯◎◆♪!?」
「おー、いいリアクション」
思わず後ずさったウチの耳に、イケメンの笑い声が響く。後ずさった事で気付いたけど、ウチの寝ていたのはソファーだった。
「僕はね、『のっぺらぼう』。自分の顔がない代わりに、何でも好きな顔になる事が出来るんだ」
「私は『百目』。他人の目を自分の目として、視界を共有する事が出来るわ」
そして続けて言った美人さんの目の色が、今度こそハッキリと
「な、何でそれをウチに教えるの? 何でウチを助けたの!?」
あまりにも非現実的な出来事の連続に、頭の中がぐちゃぐちゃになりながらウチは叫ぶ。もしこれが夢なら、早く覚めて欲しかった。
「……そうね。幾つか理由はあるんだけど……」
「ここからは僕が説明を引き継ぐよ。一つは、君にモノノ怪の存在を認識して貰いたかったから」
のっぺらぼうが顔をもう一撫ですると、のっぺらぼうの顔は元のイケメンに戻っていた。けど言われた内容に、ますますウチは訳が解らなくなる。
「ウ、ウチがそれを知ったら、何か変わるって言うんですか!?」
「変わるよ。君が、自分の本当の力を知る事が出来る」
ヤケクソ染みたウチの叫びに、けれどイケメンは涼しい顔で応える。そしておもむろに、胸の前に組まれたウチの手を指差した。
「君の人物画。おかしいと思った事はない?」
「おかしいって、おかしい事だらけですよっ! ちっとも本人に似てないし!」
「そうじゃない。本当に人物の特徴を捉えるのが下手なら、
……言われてみれば。うちがいつも上手くいかないのは、表情だけ。それ以外の体とかは、ちゃんと描けてた……。
「総ては、君の持つ力に原因がある。君も知らない、君の中に秘められた力」
そう言って、イケメンは笑みを深める。……ウチに秘められた力……?
イケメンは、そこで一回言葉を切って。そして、ハッキリと宣告した。
「君の右手は、真実を暴き出す。見たものの隠された真実の姿を絵にしてしまう――それが君の力だよ。毛虫ちゃん」
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