◆177◆ルイユが聞いておきたい事

 「では、二人はまた、ここで活動するんだな?」


 「部屋は、あのままだから」


 ロドリゴさんが言うと、ダイドさんが続けて言った。

 僕達には、この街から出て行かなくてはならない理由がなくなった。

 目的も達成された。

 本来なら一年ぐらいは、最初の街にいるらしいし、そういう発想になるよね。

 でも、ここにいたら何か巻き込みそうだ。

 アベガルさんは、僕達に監視を付けているみたいだし。きっと、ルイユが生きていると思っているんだ。

 だから僕が、ほとぼりが冷めたらルイユと会うと思っている。きっとそう。


 「部屋そのままにしていてくれたんだ」


 「僕は、明日にでも出て行くよ」


 喜んで言ったイラーノが、驚きの顔を僕に向ける。


 「なんで? ここに居た方が安全なのに?」


 エルフが襲って来る事もない。

 モイクナチ街の様に、冒険者だけの街でもない。

 まったり過ごせる街だ。

 育ての親であるロドリゴさんが居て、イラーノにしてみれば居心地がいいに違いない。

 僕も、リゼタがうざいがエジンがいないから別にこの街に居てもいい。

 でもルイユの事がばれたら……。


 「やる事が出来たんだ」


 「やる事?」


 ロドリゴさんの言葉に頷く。


 「やる事って?」


 「内緒」


 ダイドさんの質問に、そう返した。


 「じゃ、俺も……」


 「イラーノは、ここにいなよ」


 「え……」


 ジッとイラーノは、僕を見つめる。


 「僕の個人的な事だからさ」


 「………」


 「そう言う事なら今日は、ゆっくり休むといい」


 ロドリゴさんがそう言ってくれたので、僕は頷いた。

 そういう事で、部屋に戻る事にしたけど、そっとドアを開け廊下の様子を伺う。静かだしリゼタの姿はない。

 うーん。大人のいう事は聞くのか? それとも外まで連れ出した?

 じゃ今の内に。

 僕達は、リゼタに見つかる前にと元部屋に入った。


 「ふう。リゼタには参ったね」


 イラーノが部屋に入った途端、そう言った。


 「うん。まさか帰って来て早々会うとは思わなかった」


 「クテュール。さっきの事だけど……」


 「え? あ、ごめん。えっと、巻き込まない方がいいかなって」


 ロドリゴさんに説明した事だろうと、僕は謝った。イラーノは、わかってると頷く。


 「ありがとう。でも俺も連れて行ってよ。エルフの手助けをするんだよね?」


 「あ、うん、まあ……」


 それもあるけど、一番の理由はアベガルさんだ。彼が、ずっと大人しくしているとは思えない。

 あの時も一旦身を引いた。そして、攻撃を仕掛けて来たんだ。今回も何か仕掛けてくるかもしれない。その前に、この街を出ないとダメだ。


 「あれは、僕が勝手にやろうと思った事だから。イラーノは、本当の父親に会えたし、ロドリゴさんの元にいるほうがいいよ」


 「でも……」


 『主様。私も聞いておきたい事があります』


 びっくりした。そうだった。僕は、ルイユを抱っこしているんだったよ。あんまり静かだから忘れていた。

 あ、リリン! そうだ。彼女の事も忘れていた。


 「何?」


 そう言いながら、リュックにいるリリンを確認する。リリンは、おねんね中だ。よく寝るなぁ……。


 『二人の関係です』


 「二人って?」


 『ですから主様とイラーノです。話を聞いていた所、主様の父親のドドイが、イラーノの本当の父親ジュダーノに託されてイラーノを連れ帰った。そのイラーノをこの街のギルドマスターのロドリゴが育てた』


 「うん。それであっているよ」


 『では、二人はなぜこの街をでたのでしょうか? 作戦がどうのこうのと言っていましたよね?』


 イラーノと僕は、顔を見合わせる。


 「実は、父さんを殺した者が、エルフの森に入るカギを探していたみたいなんだ。本当は、そんなものなかったみたいだけど。それを僕達は、物じゃなくてイラーノ、つまりエルフの血筋なんじゃないかと思い……」


 『それは、エルフの森を探すきっかけのようですが、その他にもありますよね? あの場に居なかった事にうまくなったとはどういう事でしょうか?』


 「よく話を聞いているね……」


 イラーノが感心して言った。

 別にルイユに隠す必要もないので話す事にする。


 「僕の父さんは、殺されたかもしれないとロドリゴさんは密かに探っていたんだ。そして、突き止めた。僕の父さんを殺した相手は、テイマーだったんだ。僕が言う事を聞かないとわかったら、秘密を知った僕やロドリゴさん、イラーノ達を殺そうとしたんだ。その時にロドリゴさんは、感情にかられて相手を斬った。でもそうしないと、僕達は助からなかったかもしれない」


 「お父さんは、俺がエルフとハーフだと知れると、どうなるかわからないからって、テイマーのクテュールもその騒動でテイマーは危ないとなれば、監禁されるかもしれないと、ほとぼりが冷めるまでと俺達を街から出したんだ」


 簡単に説明すると、ルイユはやっとわかりましたと頷いた。

 本当に賢いよ。

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