◇156◇イラーノの証明

 「君は心配いらないわよ」


 マドラーユさんが、イラーノに言った。


 「魔法を所持している者は、魔力の容量も多くて回復早い。魔力を使うスキルを所持する者も魔力の回復はするけど、魔法を所持しているものよりは遅い。まあ私の様な錬金術師や鑑定師などは、魔力を回復させるアイテムで回復が一般的ね」


 「そうだったんだ」


 マドラーユさんの説明に、ぼそっとイラーノが呟く。

 それなら確かに錬金術師のマドラーユさんが、魔力のポーションを持っているわけだ。

 って、それって魔力感知のミサンガ装備出来なくない?

 せっかく作ったのになぁ……。


 「はぁ……」


 「大丈夫? 結構具合悪いわよね? 私もつい没頭して飲み忘れちゃってよくなるわ、それ」


 僕がため息をつくと、マドラーユさんが言った。


 「どうする? 動けないなら部屋に戻る?」


 「30分ぐらいで戻ると思うけど、ここで休んで行ってもいいわよ」


 そうマドラーユさんは言うと、その間手伝って欲しいなって目つきで、ジッとイラーノを見ている。


 『一旦、部屋に戻るわよ』


 「いえ、帰ります!」


 「あら、いいのに」


 僕が言うと残念そうに、マドラーユさんは言った。


 「あ、えっとこれ……」


 「それはあげるわ。餞別。あぁもう、騎士団は何をしているのかしらね。ちゃんと仕事してよね。あぁいい助手が見つかったのに!」


 イラーノがペンダントを外そうとすると、マドラーユさんが言った。困り顔で、イラーノが僕を見る。

 僕は、頷いた。

 いるいらないで、ここでやりあっても時間の無駄。くれるというのだから貰っておけばいい。


 「じゃ、ありがたく頂きます。ありがとうございます」


 「うんうん。で、君にはこれね」


 さっきの魔力を回復するタブレットが入ったケースをくれた。

 使いかけじゃないか……まあ、いいけど。


 「あ、ありがとうございます」


 「それ、あと10個ほど入っているから。あと、そのミサンガは装備しない方がいいと思うわよ」


 「はい……」


 「クテュール、立てる?」


 「うん。大丈夫」


 僕が立ち上がると、一応イラーノが支えてくれた。


 「いつでも戻って来てね」


 「はい。解決したら是非」


 マドラーユさんに、イラーノがそう返すと、彼女は満足そうに頷いた。


 『行くわよ』


 僕達は、こっそりと抜け出した宿に、こっそりと戻った。

 ベットに横になった僕は、目をつぶる。

 まだちょっと、クラクラしていた。

 もう魔力切れは勘弁だ。イラーノが羨ましい。


 「主様。大丈夫ですか?」


 「うん。大丈夫。二人共ごめん」


 「少し休みなよ」


 僕は頷く。

 ルイユは、人の姿になっていた。


 「主様。さきほどのミサンガを頂けませんか?」


 「いいけど。どうするの?」


 僕は、ミサンガをルイユに渡す。


 「私が、着けさせて頂きます」


 「え? でも首に着けるにしても短いと思うけど」


 「いえ。人の姿で着けますから腕ですよ」


 「ずっとその姿でも大丈夫なの?」


 「問題ありません。ただ、目立つだけです」


 「そうなんだ……」


 「宜しいですか?」


 「うん。僕はかまわないけど」


 ニッコリ微笑んだルイユは、僕が作ったミサンガを腕に着けた。


 「あぁ。なるほど。これは凄く性能がいいんですね。これでは、魔力を膨大に消費するわけです」


 「クテュールって優秀な錬金術師だね」


 優秀なのかな?

 自分用に作ったのに、使用出来ない物作ちゃったんだけど。


 「イラーノ。自分の意思で、感知能力を下げる事が出来る様です。周りの景色が普通に見えるぐらいまで下げて見て下さい」


 「簡単に言わないでよ。出来たらやってる!」


 「あら、そうですか? でもそれをしないと、あなたでも魔力切れを起こすと思いますよ」


 「え! マジ!? じゃ頑張ってみる!」


 イラーノは、窓に寄ると外とにらめっこを始めた。


 「な、なんか、ごめん」


 「自分の意思でコントロール出来る優れものなのですから謝る必要はないです」


 「じゃ、僕もコントロール出来れば、それ着けれるね!」


 そう気づいて言うと、ルイユは首を横に振った。


 「残念ながらそれを簡単に出来ない限り、このミサンガを着ければまた具合が悪くなります。魔力消費が半端ありませんので。イラーノもエルフの血を継いでいるから耐えられるのでしょう。あの二人が言う様に彼は、エルフの子なのでしょうね」


 僕の作ったミサンガで、エルフの血を継いでいるって証明されちゃったって事?

 それでエルフの村に入れるカギだから狙われている。

 あ、そうだ。

 そこに戻れば殺されないのかな?

 ハーフだからじゃなくてカギだから。だったら戻れば殺す必要なくない?

 いやそうなら、殺さずにつれ戻すか……。

 うん? じゃなんでカギなら殺さなきゃいけないんだ?

 やっぱりハーフだからなのかな?

 イラーノって完全なエルフではないよね? ミミが僕達と同じなんだから。

 そう考えると、あのエルフの二人が何故、イラーノの命を狙うのかがわからなくなった。

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