◆097◆二つの理由
僕は、ナットスさんをがしっと捕まえた――はずだったんだけど。
「逃げるわけにはいかない!」
バシッと弾かれた!
「何言ってるの! さっきの話を聞いていたよね! あの人に殺されるよ!」
「……なあ、ミーレン。一つだけ聞いていいか? あの時殺したのは、俺を助ける為でいいんだよな?」
「あぁ。合ってるよ。半分ね」
「半分?」
どうしよう。さっき時間だみたいな事をミーレンは言っていた。何かする気なんだと思うんだけど……。
一人で逃げてもいいだろうか?
……でも逃げて意味あるのか? 本当の事を知りたかったんじゃないか?
逃げたら聞けない! 父さんを殺したのが、こいつらなのかを! 殺したのならどうして殺したのかも!
本人の口から聞かないと! たぶんチャンスは今しかない!
「殺した理由は二つって事だ。一つは、あの男を始末する為」
「え? 始末?」
「もう一つは、それを知ってしまったらお前を殺さなきゃいけないって事だ。だから殺さない為に隠した。納得した? もう今更だけどな。でだ、一つ提案。俺達の仲間にならないか? 口裏を合わせればいいだけだ」
「……何を言っているんだ?」
「だから、この二人を殺すって言っているんだ」
「だから! 何故そうなるんだよ!」
「ひぃ……」
エジンが、その場にガクガクと座り込んだ。
自分が利用され、本当に殺されるって事が理解できたみたい。
「色々と知れちゃったからかな? それに彼も本望だろう? 殺したい相手だったんだし」
そう話ながらミーレンは、エジンを見る。
エジンは、ぶんぶんと首を横に振った。
「僕の父さんを殺したのって誰!?」
その問いに、ミーレンはチラッと僕を見た。
「さあ? それは知らないな」
「でも、父さんの大事な形見。探しているよね?」
「やっぱり持っているのか!」
ミーレンは、僕の誘いに乗って来た!
やっぱりあいつらの仲間だ!
「どうして父さんを殺したんだ!」
「殺したねぇ。俺が聞いた話では、どこぞのテイマーに殺されたとか……。君のお仲間だ」
「………」
何がお仲間だ!
「もしかして、君が無茶ばっかりしているのは、父親の真相を探る為なのか? それにミーレンが関わっている?」
「そうだよ! そのテイマーはミーレンの仲間に殺された!」
「俺の仲間って誰よ」
「今更! 口封じで殺したってさっき言ったばかりだろう! ゴブリンまで使って牢にいた奴まで殺した! いや、そう見える様に殺した! 結界の装置を壊したのもあんただ!」
「なるほど。ギルドマスターは、そこまで掴んでいるって事か」
しまった!!
情報を教えてしまった!
もうこうなったら何としてでも捕まえるしかない!
ロドリゴさんに突き出してやる!
「ジーン! 彼を動けなくして!」
『
「待て!」
驚いて止めようとするナットスさんに僕は抱き着いた。
「このままだと僕達は殺される! ナットスさんもわかっているよね? ここで逃がしたらロドリゴさん達も襲われるって!」
僕がそう言うと、ナットスさんは目を見開きミーレンを見た。ジーンが襲い掛かって来るのに構えている彼を――。
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