◇090◇ムダマンスの提案
ミーレンさんと二人でミーレンさんの父親のお店に伺うと、結構立派で驚いた。
街の中心部より外れにあるけど、大きな倉庫まである建物。
何でも数年前からこの街で商いを行っていて、ここは借りている建物らしい。直接売る商売より、ここに居るのは仕入れ目的なので倉庫があるここを借りたそうだけど……これ、移動する時どうするの?
「興味持った?」
僕があんぐりと倉庫を見上げていたからか、ミーレンさんがそう聞いてきた。
「あ……うん」
「こっち。裏から入ろう」
ミーレンさんに連れられて、僕達は裏口から入って行く。
「ただいま。父さ~ん!」
「おや? お客さん?」
「まあ、何と言うか。薬草が好きみたいで、こんなの受けちゃったみたいなんだ」
奥から出て来たミーレンさんの父親は、ミーレンさんと同じく濃い紫色の髪で、結構がっしりとした体格。
僕の商人のイメージってお腹がぽこんと出ている感じだったけど、全然違う!
「これを受けたのか? どう見ても彼はレベル1か2にしか見えないが……。何故、こんなものを? 知識があったのか?」
ミーレンさんから☆5つの依頼書を受け取ったミーレンさんの父親は驚いて言った。
「彼は、クテュールって言うんだけど、他の薬草はきっと一人でも採取できたと思う。まあ、それは確認せずに受けたようだけど。見込みはあると思う。……冒険者をクビじゃかわいそうだからさ」
「うむ。そうだな。私は、ムダマンス。そう呼んでくれ。ところで、クテュールと言ったか。あなたは、ずっと冒険者でいるつもりかね? 息子から聞いていると思うが、私は後継者を探している」
そう言うとジッと僕を見ている。
何だろう? 値踏みされているような気がするんだけど……。
「えっと。薬草に興味があるし、冒険者よりは向いているとは思うんだけど……」
「では、見習いを条件に血ランをあげよう」
「え!?」
「ちょうど保存してあるのがある。依頼主がそれでもいいと言うのならどうだ?」
何故そこまでしてくれるのだろう? 確かそれ希少で高いんじゃなかった?
「警戒しているのかね? 私も一年もレベル1でいて、クビになった冒険者を後継者にはできないからね。後、もちろんこの報酬は全て頂くよ。点数が引かれない様に、あなたが納めなさいって事だ」
そっか。まあ僕は何もしてないからお金はいいかな。助けてやるから弟子になれって事みたいだけど……。テイマーだと知ったらどうするんだろう?
冒険者を辞めたら監視がつくしバレるよね?
でも辞めるにしてもクビは嫌かな……。
「ありがとうございます。貰ったお金は全て渡します」
「そうか。では、少し待っていてくれ」
「はい」
ムダマンスさんは、奥へと行く。その後をミーレンさんはついて行った。
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