◆015◆冒険者の証
向かった先はカウンターだった。
「証出来てる?」
ナットスさんが聞くと、受付のお兄さんは頷いて、ブレスレットをナットスさんに手渡した。
「その子を抱っこしていると、自分でつけられないな。俺が付けてやるから左手を出して」
そうナットスさんに言われ、僕が素直に左手を出すと、ブレスレットを僕の左腕に嵌めた。
カチャ。
ブレスレットは、碧く澄んだ直径三センチの平たくした石を繋ぎ合わせたものみたいで、一つだけ魔法陣が刻んであった。
「では、ここに手を通して下さい」
僕がブレスレットを嵌めたのを見た、カウンターのお兄さんが言った。
カウンターには、筒の形の装置があった。
そこに手を通して、証であるブレスレットがその装置の中に入ると、装置の中で光が、ブレスレットの情報でも読み取るように一周する。
そうすると、装置に文字が出た!
――クテュール レベル0 ジョブ:テイマー 男 備考:裁縫の加護
「うん? 何でしょう? この、裁縫の加護って……」
文字は、装置の側面に表示されていて、お兄さん側にも表示されているみたいで、カウンターのお兄さんが首を傾げている。
うーん。一応、好きなだけ裁縫がしたいって希望は、叶えたみたいだけど。状況は、今現在出来る環境じゃない!
なんで、こう上手くいかないんだろう!
「テイマーに全く関係ないな」
ナットスさんも腕組をして首を傾げている。
「まあ。何かに影響するような加護でもなさそうだし。取りあえず今日は、家に戻って必要最小限の荷物を持って、明日からここに寝泊りしてもらう。あ、その子は、森に一旦戻してもらってもいいかい? モンスターは、街や村には許可なく入れてはいけないから。覚えておくように」
「はい。わかりました……」
うーん。暫くは森に行けなさそうだ。
ジーンがいないと、キュイの所には一日かけても僕じゃ行けないだろうし。
僕達の思惑通りに事は進まなかった。
最悪なのは、エジンと同じ冒険者ギルドに寝泊りする事になった事だ。
もう何もしてこないとは思うけど……。
「じゃ、一緒に帰ろうか?」
にっこりと何故かリゼタが言った。
「うん? 僕一人でも帰れるけど?」
「何言ってるのよ。またふらっとどこかに行った困るでしょうに!」
「………」
そうだった。リゼタは言い出したらきかないかった。
まあ、一緒に行くぐらい……やめた方がいいかも。エジンが凄い怖い顔で僕を睨んでる。
あぁ、エジンはリゼタが好きだったっけ? いやそう聞いた訳じゃなく、見ていてそう思ったんだけど、間違いないね。
めんどくさ!
リゼタを断るのも大変そうだし、一緒に行ったらエジンにまた命を狙われそうだよ!
関わりたくないのに!
「ほら行くわよ」
「ちょ……だから僕一人で行くから!」
そう言ったのにリゼタは、僕の左手を強引に引っ張った!
何でこうなるんだ。
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