◆013◆新人教育のナットス

 冒険者ギルドは、門の近くにあった。徒歩五分ほど。

 ぞろぞろ歩く僕達は、注目されていた。

 まあ、ギルドマスターと一緒に歩いているんだから、何だろうと思ってるんだろうけど。


 建物の中は、正面がカウンターになっていて、奥の右手にドアがあった。そこにロドリゴさんは入って行く。

 ちなみに左手は、ちょっとしたスペースになっていて、休憩するところらしい。丸太みたいのがいっぱい置いてあった。

 そこにいる人達が、ドアに入って行く僕達をジッと見ていた。なんか怖い。


 「そこにどうぞ」


 どこか部屋に連れて行かれるかと思ったけど、ドアを入った両脇に、仕切りがあり、四つのスペースがあった。

 手前の右側の衝立の裏側に連れて行かれて、そこにあった丸太に座るように指示された。テーブルも木だ。


 イスは三つずつ並んでいて、手前と奥で六個ある。手前のに座ろうとしたら奥へと指示され、僕、リゼタ、エジンと座った。

 一緒にいた為か何故か二人もついて来たんだけど!

 もしかして、付き添いとか思われているのかも……。違うんだけどなぁ。

 僕の目の前にロドリゴさんが座る。あのおじさんはついてこなかった。


 「失礼します」


 そう言って衝立の奥に入って来たのは、二十代後半ぐらいの男の人だ。腰に剣を差しているから剣士かも。


 「彼は、新人教育のナットスだ」


 「こんにちは」


 「こんにちは……」


 ナットスさんは、明るい茶色髪と同じで明るく挨拶をするも僕は、ボソッと返してしまった。

 だって目の前の二人は、エジンと違ってちゃんとした鎧を身に纏っていて、上級冒険者って感じ。

 村に居たら会えない人達で、僕どうなっちゃの? と少し不安になった。


 「そんなに怯えなくてもよい。本来なら適正テストをするところだが、君はテイマーと認められた。これから手続きと今後の話をするだけだ。色々規則があるからな」


 ロドリゴさんは、隣にナットスさんが座ると、僕にそう説明した。どうやら合格して、冒険者になれそうだ!

 一時はどうなるかと思ったけどよかったぁ。


 「で、こちらが契約書と冒険者の書です。まずこちらに目を通して下さい」


 ナットスさんが、契約書と冒険者の書を僕の目の前に置いた。そして、冒険者の書をぺらっと一ページめくり指差す。

 そこには、大まかな規則が書いてあった。


 ○冒険者のあかしは、必ず身に着けている事。

 ○一般人に手を上げてはならない。

 ○モンスターを発見した場合は、むやみに襲わずに、ギルドに届ける事。(倒せるなら倒してよい。ただし自己責任)

 ○ジョブを偽ってはならない。


 などなどいっぱい書いてある。


 「それで適正テストは、しておりませんのでその料金はいりませんが、必ず冒険者保険に入って頂く事になっております。保険料として毎月頂きます。ですので、最寄りのギルドに毎月お金をお持ち頂くか、まとめて支払って頂く事も可能です。で、今日はお金は……」


 「えっと、今お金ないんですけど……」


 やっぱりお金はいるんだ!

 僕がないと答えると、ロドリゴさんとナットスさんは、顔を見合わせた。

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