第113話:案内



 日が落ち辺りが暗くなった時間帯、愛那は案内された食卓でライツとリオルートの家族と共に食事を摂った。

(どれも美味しい・・・・・・。これって、どんな食材でどんな調味料が使われてるんだろう? 厨房の見学とかしてみたいなぁ)

 自分のお弁当は自分で作り、食事の手伝いをすることが日頃から当たり前だった愛那は、この世界の食についてどうしても気になってしまう。

 なので、食事の後、ライツと共に食堂を出たところで、

「どこに何があるか慣れるためにも、城内を散歩してから部屋に戻ろうか?」

 そうライツに誘われ、愛那は頷き「どこに行ってみたい?」と訊ねたライツに愛那は笑顔で「厨房に!」と答えてしまった。

「厨房?」

 驚いた表情を見せるライツ。

「ええ! この世界の食文化が気になってしまって」

「食文化」

「私、向こうで普段から料理をしていたので、この世界の食材や調味料に興味があって。もしよければ厨房を見学したいなぁって」

(そして向こうの世界の料理が再現できるか試してみたい!)

「マナが料理を?」

 そこで愛那がハッと思い出す。

(あ! 貴族の人って料理しないんだっけ? 私、貴族じゃないけど、料理は禁止とか言われちゃう?)

 おそるおそる愛那がライツを見ると、目が合ったライツが口を開き、

「マナの手料理、食べてみたいな」

 と笑顔で言ってくれたので、愛那はすぐに「作ります!」と応えた。

「あ、いえ。作ってみたいです。もちろん、この世界の食材のことを勉強してから」

「そうか。楽しみだ」

(私も楽しみです!)

 ニコニコと互いに笑い合う二人。

『美味しい手料理は男を落とす武器になるからね』と言っていたのは愛那の祖母だ。

(おばあちゃん、私頑張るからね!)

 しかしこの時間帯、忙しい厨房に行くのはやめておいた方がいいとモランとナチェルに言われ、厨房へ行くのは日を改めることになった。

 それではと、ライツが城の最上階へと愛那を案内する。

「最上階に何があるんですか?」

 手を引かれ、階段を上りながらライツへと訊ねる愛那。

 ライツは愛那へと微笑み「着いたらわかるよ」と答えた。



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