第108話:兄弟3



「関係ないというのは違うんじゃないか? マナのおまえに対する態度を見ていればわかる」

 それを聞いてもライツは少し寂しげに微笑むだけだ。

 リオルートはそんな弟を見て(たしかにらしくないな)と思う。

 ハリアスから「ライツ様が初めての恋に戸惑っておられるようです」と聞いた時は常に冷静なあの弟がどんなことになっているのかと楽しみにしていたが、その恋の相手が救世主様となると、無責任に面白がってばかりもいられない。


 ライツは幼い頃から優秀で、子供らしくない子供だった。

 リオルートとライツの年の差は六年。今まで喧嘩など一度もしたことがない。

 本を読むことを趣味にしていたリオルートは博識で、ライツはわからないことがあれば、そんな兄に頼ることが多かった。

 ライツが初代国王と同じ【鑑定】というスキルを持っていることに自分で気づいた時も、唯一頼ったのはリオルートだった。


「ライツ」

 兄に名を呼ばれたライツが「はい」と応える。

「女性の口説き方に困った時は、一応妻帯者である私やハリアスを頼ってくれていいからな」

「・・・・・・兄さん」

 低音になった弟の声にリオルートが笑みを返す。

「からかったわけじゃない。うまくいって欲しいだけだ。・・・・・・それと、久しぶりにおまえに頼られるのも悪くない」

 兄の言葉にライツがフッと笑う。

 そして困ったような顔をして見せた。

「・・・・・・・・・・・・大丈夫ですよ。ありがとうございます、兄さん」



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