第98話:淑女の正解がわからない


 愛那はとっさにリオルートへと走り寄って膝をついた。

「やめて下さい!」

 驚いた表情のリオルートと間近で視線を合わせ、愛那は(あ、ライツ様と同じ目の色)と思ったが、それどころではない。

「あ、あ、あの。救世主だからとかそういうのは・・・・・・その、普通に接してくれると嬉しいです」 

 徐々に声を小さくしながら愛那が伝える。

(わあああん! とっさに体が動いて淑女らしく出来なかった~! ていうか淑女の正解がわからない~)

 泣きたい気持ちの愛那に、ライツが歩み寄って手を差し伸べる。

「とりあえず二人とも立とうか?」

 そうライツに促され、リオルートが微笑を浮かべ立ち上がる。

 それを見た愛那も、ライツの手に右手をのせて立ち上がった。

「当然だけど、マナはまだこちらの世界に慣れていないんだ。恐縮してしまうから普通の令嬢に接するくらいの対応で丁度いいんじゃないかな?」

 ライツの言葉にコクコクと愛那が頷く。

「わかりました。救世主である貴方様がそうお望みならばそうしましょう。では、マナ嬢とお呼びしましょうか?」

「いえっ! マナでお願いします!」

 元気よくそう返答してしまった愛那。

(ごめんなさいナチェルさん! 淑女について勉強し直します!)

「では、マナ。伝えておきたいことがあるので、座って話をしようか?」

 促され二人掛けのソファに愛那とライツが座る。

 一人掛けのソファへ腰を下ろしたリオルートが口を開いた。

「マナ。君が救世主であることは、しばらくの間伏せておいた方がいいと判断し、皆の前で先程のような対応をしてしまったことを許して欲しい。ここにいる間は、ライツの恋人として周囲に認識してもらうことにしたので、よろしく頼む」



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