第94話:もう一人の要注意人物



(ライツ様のこと。私の憶測で話をしてマナ様のお気持ちを振り回すことは出来ない。今は余計なことは言わないでおこう)

 ナチェルがそう心に決める。

「マナ様」

「はい?」

「あとこれは絶対に覚えておいて下さい。そして警戒して下さい。・・・・・・バリンドル家には、もう一人要注意人物がいます」

「え?」

 愛那の顔が曇る。

「マリエル嬢の兄、ダッセル・バリンドル」

「兄・・・・・・どういう人なんですか?」

「バリンドル公爵家の跡継ぎで、女の敵です」

「え・・・・・・」

(女の敵?)

「昔からバリンドル家の当主は正妻以外に愛人をたくさん囲ってきました。そしてそれは今でも続いています」

(・・・・・・それは物語に出てくるハーレムとか後宮とかの話ですか?)

「気に入った女性は無理矢理にでも手に入れようとする男です。マナ様の存在を知れば確実に接触してこようとするでしょう」

「それは・・・・・・」

(やだ。・・・・・・ようするに、女癖の悪い男ってことよね? ダメよ! 私はライツ様以外の男なんていりません!)

「ナチェルさん・・・・・・その男からも、私を守って・・・・・・くれますか?」

 愛那が不安な瞳でナチェルを見つめながらそう訊ねると、ナチェルはすぐに手を胸に当て「必ず」と答えた。

(ううっ。頼もしい! だけど、やっぱり守られてばかりじゃダメよね。そうよ私は救世主! 自分の身は自分で守らなきゃ!)



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る