第69話:抱きしめられた



「マナ様!?」

 ナチェルが立ち上がる。

「お待ち下さい! 何故姿を消そうとしているのですか!?」

 ナチェルとモランの目の前で、愛那の姿が透明になって消えようとしていた。

「ごめんなさい~! ちょっと消えさせて下さい~!」

(恥ずかしい~! 穴があったら入りたいとはこのことね!! あはははは! 穴が、穴がないから消えちゃおう! なんて便利な私の魔法!!)

 羞恥で熱くなった顔を両手で隠しながら愛那の姿が完全に消える。

「マナ様!」

 慌てて愛那の隣へ滑り込むように座ったナチェルが、手を広げて見えなくなった愛那の体を抱きしめる。

「えっ? ナチェルさん?」

 抱きしめられた愛那が戸惑いの声を上げると、ナチェルは「ご無礼をお許し下さい」と言った。

「しかし、姿を消したマナ様を探す術は私にはありません。こうしていないと不安で・・・・・・」

(そうだ。マナ様が本気で逃げてしまったとしたら、ライツ様しか見つけ出すことが出来ないということだ)

 もしそんな状況になったらと想像し、ナチェルは腕の中の愛那を強く抱きしめた。

 その抱きしめられた愛那はビックリして先ほどまでの羞恥を忘れていた。

「えっと、不安にさせてごめんなさい! すぐに元に戻ります!」

 そうして愛那がその姿を徐々に現したその時、ガチャと音を立て、部屋の扉が開いた。

「!?」

 そこに立っていたのは城から戻ってきたばかりのライツとハリアス。

 ライツは、ナチェルに抱きしめられている愛那の姿にしばらく呆然とした後、首を傾げ、ぎこちない笑顔を見せ問いかけた。

「・・・・・・・・・・・・ただいま、マナ。何を、しているんだ?」



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